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「だからまあ、つまりはコレでもなんでもないわけですよ」
親指を振ってグラスを煽る。目の前にいる友人は苦い表情をしながらもビールジョッキを揺らした。
「馬鹿だねえ。結局アンタは、本当のところどうだったわけよ」
「私ぃ？」
「元カレはアンタを好きじゃなかったとして、アンタはどうだったのよ」
厭に確信をついた言葉だった。
私はどうか、と問われると難しい。だって、告白される前までの3回の食事は普通に楽しくて、付き合ってからの関係も楽しかった。それなりの行為をすることに嫌悪感なんて抱かなかったし、むしろアイツが拗ねてキスを強請ってくるのは可愛くて好きだった。
……ああ、そうか。すき、だったのか。
私は、伊沢拓司を好きだったのか。
「好きって、なんだろう」
いつかの伊沢みたいに呟いてみた。友人は苦笑いを零しながらジョッキの中に残ったもう炭酸も抜けているだろうビールを無理やり流し込んだ。
「アンタはもう答え出てるみたいだけど？」
「んー、ぅん。そうだねえ」
月が綺麗だとか、死んでもいいとか。
人それぞれでイマイチ咀嚼しきれない。だけど、私はきっと伊沢の中で、興味のないカテゴリに入るのが嫌だった。だから、いつも曖昧な態度ばかり取っていた。嫌われてても、好かれてても、どっちでもいい。何らかの感情を私に向けて欲しかった。
私に少しでもいいから、何かを思って欲しかった。
「前に有名人がね、恋愛を語ってて馬鹿だなーって言ってた。その人さ、3回目の食事で絶対に告白して、無理なら諦めるんだってさ」
「はは、何それ」
「なんかねえ、尊敬する人が言ってたんだって。3回目で無理なら何回目でも無理だって」
アンタの元カレも、そうだったらいいねえ。
そう言っておかわりのビールを頼む友人に、心の中で感謝をする。
「そうだと、いいねえ」
もしそうだったとしたら、伊沢は私の事を本当に好いていてくれたのだろうか。
そうだったら、最後のあの大事な話はなんだったのだろうか。
どうだったにせよ、もう全て終わった話で、真実なんて分かりっこないのだ。
誰かが言っていた。忘却はよりよき前身を生む、と。
それならば、きっと私は一生、恋愛事で前身することがないのだろう。
だって、全てが曖昧で終わってしまった不完全な青春を、私は忘却出来る自信がないからだ。
『好きとはなにか』
それは、いっとう忘れることの出来ない思い出ではないのだろうかと私は思った。
伊沢は、その答えを出せたのだろうか。
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早瀬(プロフ) - カルボンさん» カ、カルボンさん…！作品拝読しております！テーマ褒めて頂きありがとうございますお気に入りのテーマでしたので嬉しいです…！(T_T)皆様のお陰で素敵なものができて私も感激です！素敵な感想ありがとうございました！ (2020年10月27日 0時) (
レス) id: d923da9d53 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - あっ、、、致死量のエモ、、、。まず｢好きと言わない告白｣という企画テーマが天才すぎて頭抱えました。素敵すぎてこちらはどうにも｢好き………｣としか現在言葉が出てこない状況です。素敵な作品、ありがとうございました。 (2020年10月26日 23時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
早瀬(プロフ) - こむらさん» コメントありがとうございます！皆様が織り成すこの素敵な恋模様がとうとう世に放たれました……！私も感激で言葉がでません…(T_T)ご覧頂きありがとうございました！！ (2020年10月26日 22時) (レス) id: d923da9d53 (このIDを非表示/違反報告)
こむら(プロフ) - 拝読しました。素敵な企画を本当にありがとうございます。どのお話も心を動かされました。私の語彙力ではうまく表現出来ませんが、メンバーと女の子たちの精一杯の愛情を見せて頂けて本当に幸せです。1話読む事に深呼吸して天を仰ぎました。お疲れ様でした。 (2020年10月26日 22時) (レス) id: 611554b67c (このIDを非表示/違反報告)
早瀬(プロフ) - やまだ はなこさん» コメントありがとうございます！そうなんですバチバチのエモなんですこんなとんでもないことあっていいのかという次元にきてます……！企画、お褒め頂きありがとうございます！ぜひこの神々のお話を何度も何度も読んでください！！(*^_^*) (2020年10月26日 21時) (レス) id: d923da9d53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：早瀬 | 作成日時：2020年10月3日 0時
