心 × inar

父の日と… ページ15

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夕飯時の今は、このマンションには会社帰りの人の足音が、静かなこの空間に響く…





有｢…！｣





だいちゃんは 何かに反応して肩をビクッとさせた。







有｢､ .... っ､ おと、さんが来る！...いやっ､ ごめんなさいｯ！！いいこにしてるからっ.. ､｣

伊｢えっ、だいちゃん！？｣






待って、両親は今刑務所いるはず。

執行猶予三年で釈放されて、その後 だいちゃんがお父さんに見つかってすぐに隠れて暴行…。


その事はすぐにバレて刑務所へと逆戻り。
そんな事を繰り返し、オレもたまに巻き込まれたりして今度は前よりも長い判決が下された。






伊｢お父さん来ないよ、大丈夫。｣

有｢…っ､｣





色濃く残る、両親の記憶…。
脳裏に焼き付いて…消えないんだろうな、…､､






それからはただ静かに涙を流すだけで、声すら出さない。
オレの声なんて聞こえてない。




…そっか、……そうやって両親の帰りを待ってたんだ。
｢ごめんね、大好きだよ｣その言葉が聞けると信じて…。






有｢…ｯｯ､｣







玄関のドアを見ながら正座して、カタカタと震える だいちゃんを見ると、オレが泣きたくなる…






伊｢だいちゃん､｣

有｢ｯｯ……､｣





そんな姿に居た堪れなくなって、真正面から抱きしめてやる。





伊｢…だいちゃん。よーく聞いて。オレは、いのお けい。今は一緒に暮らしてるね、｣

有｢…ｯ｣

伊｢だいじょーぶ、オレがずっと一緒にいるよ｣








ゆっくり。語りかけるように言う…。



だいちゃん置いてきぼりにして、どこかへ行くなんてオレに出来っこない。

例えオレが死んだとしても、結果的にだいちゃんを守れるなら本望。







有｢…っ、ぃ､ ちゃ……っ？｣

伊｢うん｣

有｢ず､と…いっしょ、｣

伊｢うん、一緒｣






ダラン、と力ない腕をオレの腰に回した だいちゃん。

今度はオレの存在を確かめるかのように、ぎゅうぎゅうと抱きついて。






有｢うぅぅうっ、いのちゃぁっ、やだぁｯｯ、ひとり、しないでぇっ！！…おいてかないでっ、いのちゃっ…｣

伊｢…ふふ、オレいるでしょ？｣

有｢、…んんっ、｣





やっぱり、なんだろう、匂いなのかな。笑
スンスン匂いをかいで少し落ち着いたみたい。


しゃくり上げながら鼻水と涙をオレの肩で拭く…


…、え。笑







伊｢…今鼻水拭いたでしょ｣

有｢、…｣






…そんな事、どうでもいんだけどね。



だってさ、…笑ってくれたんだもん、

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