時が流れるのは早いよねぇ… ページ5
荼毘さんに制服で学校もバレているというのもあって、あの日からちょくちょく絡まれるようになった。
ただ、「次会ったら殺す」と予告されていたので、見つけた瞬間に私は彼の名前を呼んだ。
彼は、私の個性の発動条件は知らないから、いつ使われたかは分からない筈だ。
もっと言えば、解除条件も分からない。
たまに、悪戯で別れ際にもう一度個性をかけ直したりしているから、尚更だろう。
この悪戯で自分の寿命を伸ばしていると言っても良いかもしれない。
最初の何度かはそれこそ殺そうとしては失敗してすぐに帰っていたものの、最近は雑談をしてくるようになった。
野良猫が少し心を開いてくれた時のような気分だ。
それでも、彼が本気であれば殺すことは出来たのだろう。
「お前いい加減個性使うのやめろ」
「いい加減そのお前呼びとジリジリ近づいてくるのやめてくださいよ“荼毘さん”」
「そいつは無理な相談じゃ」
「えっ？」
「っ！、てめぇ……！！」
「あっはははは」
盛大に語尾を噛んだ荼毘さんに、思わず笑いが零れる。
「…はぁ、もういい…今日は何があった」
「えー、今日はね〜」
相手が敵と分かっていて話すなんて馬鹿なのかもしれないが、私には彼は普通の人に見えた。
今ではもう殺そうとするのも挨拶代わりなのかもしれない。
いや怖いわ。挨拶程度に殺しに来るな頼むよ。
暫く話していた、と言っても、私が勝手にベラベラと自分の話をしているだけだった。体育の時間にすっ転んだ話とか。
荼毘さんは噛むのを気にしてか話を聞く時は「あァ」としか言わなかった。
相槌を打つ人形のようだ。
「…送っていく」
「家知られるの怖いので結構です」
「人の親切は受け取るもんだろうが」
「荼毘さんの親切さってなんだろう」
「俺ほど優しい奴はいねぇぞ？」
「優しい奴は挨拶がわりに殺そうとしないんすよお兄さん知ってます？」
「もう会いたくないね、ばいばい荼毘さん」
「仕方ねェからまた会いに行ってやるよ、じゃあなガキ」
またね、は言えないからもう会いたくないよが私の別れの挨拶になっていた。
「荼毘さんそこバナナ」
「あ゛っ？！」
個性で普段は気にせずともしないミスをするということ、ドジは避けられないということ。
それを理解している荼毘さんは面白く反応してくれるし、その反応してしまうのすら個性の影響だと知っている。
「嘘ぴょーん」
「灰すら遺さず燃やしてやる」
「ごめんて！！！」
今日も私は走って逃げ帰った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 482人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ヒロアカ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナナシ - すっごく面白かったです！読み切ってしまったのが残念に思うくらいです。心地よいドキドキ感が味わえて楽しかったです。絶対また読みます！ (2023年4月4日 2時) (
レス) @page40 id: d5c4f7e5a3 (このIDを非表示/違反報告)
素因数分解(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉明るくクスッと笑えるあなたの作品が大好きで毎日更新を心待ちにしていました。それがなくなると思うと少し寂しいです。凄く面白い作品です。お疲れ様でした🍵 (2023年3月26日 15時) (レス) @page39 id: 2687d60546 (このIDを非表示/違反報告)
はないかだ(プロフ) - タイトル回収！！しかもヒロアカアニメと同じタイミングとか！！！図ってましたか？？ (2023年3月18日 22時) (レス) @page32 id: d9e7127375 (このIDを非表示/違反報告)
春風いちご(プロフ) - トガちゃん可愛いっ！！尊すぎるぅ… (2023年2月26日 15時) (レス) @page22 id: d57e220c95 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - コメント失礼します。先ほどTwitterをフォローさせていただきました。もしよろしければフォロバよろしくお願いします。この作品とても楽しみに読ませていただいてます。頑張ってください！ (2023年2月13日 14時) (レス) @page12 id: fd40c107eb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：燈 | 作成日時：2023年1月28日 11時
