20話 ページ21
続き
ーーー翌日。
(ーーー不死川さん、遅くなるって言ってたなぁ。
今年は1人ではないと思ったのだけれど。
まぁ、知ってるわけないか。)
Aは、朝起きたら置き手紙で今日は遅くなる、との事が記されてあったのを見たのだ。
数年間毎年1人で誕生日を迎えていたAは、今年は1人ではないのでは、と淡い希望を抱いていたのだ。
(ーーーあの人は柱なのだから、忙しいに決まっているものね。)
そんな事を思いながらも、夕飯の買い物をしていた。
ふと、遠くに知っている白髪がいるのが見える。
今日は不死川には会えないかもしれないと思っていたAの心は明るくなる。
声をかけようとした時であった。
「さねみさん、次は洋菓子なんてどうでしょう？」
「洋菓子かァ。…行くかァ。」
鈴のなる可愛い声。
それに答える何時もより柔らかい声と表情。
小さく白い柔らかそうな手が不死川の袖を引く。
硬直する身体。
世界から色が消え、2人だけ色付いて見える。
遠く離れていたはずなのに2人の声しか聞こえないように、鮮明に耳に入って来る。
心臓がぎゅっと掴まれる感覚に陥る。
ーーードクン。
大きな音で跳ねた。
呼吸が乱れる。
見てはいけないものを見てしまったかに思え、踵を返し、走ってその場を去る。
(ーーー彼の人のあんな優しい顔なんて知らない。あんな穏やかな声なんて知らない。)
ふと、水溜りに映る自分を見る。
肩下の結っていない髪の毛は走って来たのもあり、ボサボサ。
紅もしていなければ、目の下のクマは濃く、肌も艶が無い。
鍛錬で痣や腫れができている。
おまけに任務帰りの為、黒い隊服。
手は水仕事で出来たあかぎれと豆と傷痕。
両手に野菜の入った大きな袋。
(ーーーかわい、かったなぁ。)
先程不死川の隣にいた女子を思い出す。
ハイカラな洋服に色は赤。
走りよった時にリボンが靡く。
手入れの行き届いた艶やかな髪と肌。
綺麗に化粧が施されていた顔。
穢れを知らない大きな瞳。
見ただけで大切に育てられて来たのがわかる。
手も身体も小さく、女性らしく柔らかそうだった。
何よりも花が咲いたような笑顔。
鈴のような可愛らしい声。
控えめに男性の袖を引く動作。
正に理想の女であろう。
(ーーーそれでも、この道を決めたのは他の誰でも無い、自分なのだ。
私に羨ましく思う時間など無いのだ。
私には義務が、思いが、願いが、託されているのだ。)
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ゆきな(プロフ) - はえ〜…好き (2020年3月19日 3時) (
レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - 待って泣く泣くてかもう泣いちゃたー！｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡とても面白かったです( ≧∀≦)ノ (2020年3月15日 3時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
つむぎ - 随分遅れましたが続編おめでとうございまーす！！！！！これからも更新頑張ってください、応援してます！ (2020年3月14日 9時) (レス) id: 9d8d7fe98a (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - 帰れない！嘘、(゜゜;)とても面白かったです( ≧∀≦)ノ (2020年3月14日 0時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - 最初から最後まで、読みました！とても面白かったです( ≧∀≦)ノ後ランキング5位おめでとうございます！(* ´ ▽ ` *)ﾉ (2020年3月13日 10時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：北窓 | 作成日時：2020年3月12日 23時
