─ ページ31
.
「ああっ、なんてこと」
スプラウトとミネルバが息を詰まらせながら倒れ伏すウィーズリーの元へと駆け寄る。
「……大丈夫、意識を失ってるだけみたい」
スプラウトの言葉にミネルバは胸を撫で下ろし、すかさず懐から杖を取り出してウィーズリーに向けて振った。
すると、杖の先から光の粒子がふわふわと漂いウィーズリーの身体中にできた傷跡へと寄り添い、じわじわとその傷跡を治していった。
「みなさん、ここは私とスプラウトに任せてどうか先へ」
マダムフーチが意識を失ったままのウィーズリーをゆっくりと抱き上げながら我々に先へ行くよう促す。
その言葉に頷きダンブルドア、ミネルバ、フリットウィックと共に私達は次の部屋へと進んだ。
次の部屋はトロールの間、担当した教師はクィレル。
ぞわぞわと胸の中に嫌な予感が走り、半ば扉を開けようとしたダンブルドアの前に割り込むようにして部屋の中へと入る。
部屋の中は蝋燭で照らされているとは言え薄暗く、目を凝らすと屋内の所々が破壊され土煙が舞っているのが伺えた。
そして床には……恐らくだがトロールだったもののかけらが硬直した状態で撒き散らされていた。
……魔法の効力が解け始めているのだろう、かけらからはじわりと鮮血が滴り落ち始めていた。
部屋に入ってすぐ嗅覚を刺激した血の香りはこれだったのかと思い辺りを見渡すと、ちょうど柱の影になっていた位置にあの子はいた。
身体の至る所に切り傷を作り出血をして、ぐったりと項垂れて座り込んでいる。
「……っ、フォーリー」
土埃でローブが汚れる事を気にする事なくフォーリーに駆け寄りその場に膝をついた。
そっと指先を頬に添え持ち上げると、フォーリーは目をうっすらと開いたまま意識を失っているようだった。
青空の瞳がうっすらと濁っているのに、私は少しだけ恐怖した。
かつて、同じ瞳を見た事がある。
あの家で、彼女の翡翠色の瞳が、濁っていて、それで。
「セブルスや、フォーリーの出血がひどい。癒してやっておくれ」
「っ、わかりました」
そう、意識の確認をするのも当然だが、それと同時に傷の手当てをしてやらなければ意味がない。
フォーリーの身体にできた傷はひとつひとつが小さなものだったから良かったものの、もしこれが大きなもので、生命を維持する器官の近くに出来ていたとしたら。
そう考えるだけでぞっとした。
杖を傷口の上をなぞるように振るうと、真っ赤な血肉を見せていた傷口はゆるゆると塞がっていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 238人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夢川(プロフ) - とーるさん» コメントありがとうございます。淫夢、くそみそネタに気づいてくれた方がいる事実にニコニコしている夢川です。亀更新になりますがこれからも淫夢やくそみそネタを突っ込むので、生暖かい目で見守ってくれたら嬉しいです。 (5月7日 18時) (
レス) id: f5c230c4ae (このIDを非表示/違反報告)
とーる(プロフ) - 主人公がすごく幸せそうで微笑ましいですね。この作品に巡り会えて本当に良かったです。ところで、作品の節々に淫夢、クソみそネタが見られるのですが、すごく好きなので嬉しいです。知らないなら、淫夢とかクソみそについては調べないでください。汚れてしまいます。 (5月7日 9時) (レス) @page38 id: 8f3ff0fe85 (このIDを非表示/違反報告)
箱 - ステキな作品を書いてくれてありがとうございます (2023年3月27日 17時) (レス) id: e97eef8072 (このIDを非表示/違反報告)
夢川(プロフ) - リンさん» コメントありがとうございます、とても健康的な生活ができていますね! 本番が程よく執筆できたら短編集も作成していきます! (2023年3月25日 22時) (レス) id: f5c230c4ae (このIDを非表示/違反報告)
夢川(プロフ) - ももなさん» コメントと応援ありがとうございます、短編集も本編が程よく執筆できたら作成しようと思います! (2023年3月25日 22時) (レス) id: f5c230c4ae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夢川 | 作成日時：2023年3月24日 7時
