素直な君との攻防戦2【降谷零】

65、懐かしい記憶 ページ23

例の喫茶店へは、恐らく走って5分程度。

周囲の人に心配されそうなくらいの全力疾走中、自然と頭に浮かんだのは…

降谷と初めて会話をした時のことだった。



懐かしい警察学校時代の記憶。

他教場のキラキラ女子に誘われた合コンは、数年間友達の居なかった私にとって、初めて居酒屋を利用するチャンスで…

ちょっと浮かれていたから、隣の " 彼 " に話かけてしまったんだ。

久しぶりに人と喋れたことが、すごく嬉しくて。心の底から、楽しくて。


降谷含め、5人の同期と仲良くなれたことが

…幸せすぎて。



過去の苦い記憶なんて忘れかけてた。


だけど、女子とのイザコザを降谷に見られた時。
あぁ、私はやっぱり…友達なんて作るべきじゃないんだと思い知った。

大好きなみんなに迷惑をかけるくらいなら… " 私とはもう一緒に居てくれなくたって構わない " と、本気で思ったのに。


…あいつは、『突き放すわけ無いだろ』って、断言してくれて


｢…はぁ、は…っ、あ、わわ！｣

履き慣れないヒールで走るせいで足がもつれそうになりながらも、なんとか体勢を立て直して再び走り出す。


息が苦しい。疲れた。涙が止まらない。靴擦れが痛い。


周りの人が驚いたように、全力疾走する私を見る…けど。

どうしても足を止める気にはなれない。


｢は、…っ！はぁ｣


降谷…

降谷は、私と女子のイザコザを見ても…私の過去を知っても。

絶対に誰にも話さなかったし

嫌がりもせず、ずっと友達でいてくれた。

……私を孤独から救ってくれたのは、降谷。



死にそうなくらい忙しいのに。私にコーヒーを作って、届けてくれた。

何度も。
…何度も。


｢…っ、｣


ありがとう、って伝えたい。
君が好きだって…素直になりたい。

好きって言われてみたい。


降谷の声が聞きたい。名前を呼んで欲しい。

私に…笑いかけて欲しい。
あの、金色の柔らかい髪に触れたい。私に…触れて欲しい。

また

…抱きしめてほしい。


どうしよう。

わたし…本当に、あいつが


｢…す、きだ…っ！｣


会いたい。

今すぐ、あいたい…っ！

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