素直な君との攻防戦2【降谷零】

62、静かな公園 ページ20

ーー

待ち合わせ時刻の10分前。
指定された場所には、既に彼が居て。


｢萩原…っ！待った？！ごめ…｣
｢お〜早かったね。走ったの？｣

｢君がいるの見えたから…ちょっとだけね｣


そう言って息を整えるように深呼吸すれば、萩原は『そっか』と嬉しそうに笑った。

その姿に、胸がぎゅっと苦しくなる。


｢…急に呼んでごめん｣
｢ぜーんぜん？今日休みだったし、Aちゃんの誘いならいつでもOK〜｣

｢…ん、ありがと。……何でこの場所にしたの？｣


話がしたい、と言った私に萩原が指定したのは公園だった。
大人になってから、事件以外でほぼ来ることもないこの場所は、私にとって新鮮で。


｢んー。こういう所の方がゆっくり話せるかなぁ〜って｣

ベンチに座るように促されて、並んで腰掛ける。

萩原が隣にいる、なんて今更緊張することもないのに…
心臓がドクドクと音を立てて、ひどく耳障りだ。


｢今日もいい天気だねぇ〜｣

｢…萩原、…あの｣
｢ん〜？なぁに？｣
｢…｣


彼に言うべき事を、昨日も1日中考えていた。


だけど…

喉の奥がぎゅっと詰まってしまったみたいに、どうしても言葉が出てこない。
寒いわけでもないのに、手が…唇が震えそうになる。




話をしてしまったら、もう。


友達では居られなくなるかもしれない。
それが怖くて堪らなかった。



もう…今までみたいに、私の部屋で笑い合うことも無くなってしまうのかな。

萩原の好意を受け入れられないくせに、ワガママだって分かってる。
だけど、萩原が友達として大好きだからこそ。


……私から離れていく姿が、怖くて仕方なかった。



｢無理に話そうとしなくてもいいよ｣

｢…っ｣
｢俺はいつでも時間作るし。Aちゃんの気持ちが辛いなら、また今度にしよっか？｣


優しく背中を擦りながら顔を覗き込まれるから…
目頭が熱くなって、じわりと涙が浮かぶ。

ほんと…いつでも優しいね、君は。



優しすぎるよ。


｢萩原…は、ぎわら…っ…｣
｢ん？｣
｢…は、ぎわら！｣

｢何で俺の名前呼びながら泣くのよ。どしたAちゃん？…ん？｣


君に何を言うべきなのか…ずっと悩んでた。昨日だって、考えてたくせに結局纏まらなくて。

でも……今わかった気がする。


｢俺に大事な話、してくれるんでしょ？｣
｢…｣
｢大丈夫だよ。大体じんぺーちゃんから聞いてるから。…ね？Aちゃんの話、聞かせてよ｣

63、沢山の感謝と→←61、諸伏の言葉

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す