素直な君との攻防戦2【降谷零】

54、引き出しの秘蔵チョコ ページ12

｢諸伏がここにいるの…変な感じ｣

私の隣のデスク。
いつもなら班長が座っているそこに、諸伏。


タイミングの問題もあるんだろうけど、彼とは今まで警視庁内で鉢合わせたことも無く。

諸伏も私達と同じ… " 警察官 " なんだなぁと。
今更ながら実感できて、ちょっと嬉しかった。


｢ゼロも警視庁に来ることがあるんだ。" 仕事で " 。｣
｢あはは！コーヒーの配達だけじゃないんですね｣


警察庁にお勤めの彼。

ごく稀に、深夜…わたしが1人でここにいると、今日の諸伏のようにコーヒーを持って来てくれるけど…

" 公安モード " の降谷が警視庁に居ることもあるのか。


｢仕事中のアイツはめちゃくちゃ怖そうだから会いたくないなぁ…｣
｢ゼロはAに会いたいだろうけどね？｣
｢んなわけ｣


『本当だよ』なんて優しく微笑まれて。気恥ずかしくて彷徨う視線。

目に付いたタンブラーの蓋を開ければ、大好きな匂いが鼻腔をくすぐった。

今日飲めるとは思ってなかったから…すごく嬉しい。


｢…良かったな、A｣
｢ん。諸伏も忙しいのに持ってきてくれてありがとう｣

優しい諸伏の微笑みに、私も釣られてしまうんだ。
あ〜マイナスイオン発生機…。



｢それで…君はどうしてここに？まさか、これを届けるためだけで来た…訳じゃないでしょ？今から仕事？｣

｢いや、仕事じゃない。…俺とちょっと話そう？｣
｢喜んで！と言いたい所だけど……その…｣

ため息混じりに『まだ仕事が』と呟いてパソコンへと視線を向ける。


｢うん、分かってるよ。でも集中力が切れてただろ？この状態のまま無理に作業を続けても効率が悪い。忙しいのは分かるけど、息抜きも大切だよ。A｣


キーボードへと伸ばしかけた手をそっと掴まれて、苦笑する。

諸伏がここに来る少し前から、完全に疲れて頭は回らなくなっていたし。

ホントその通りだよなぁ…と、大人しく手を膝の上へ。


｢ﾊｲｯ！ぐうの音もでません、諸伏せんせー。ぜひ私とお喋りしましょう！｣
｢あはは。うん、Aは良い子だな。じゃあ、お菓子もあげる｣

｢わーい！ではお返しに私の秘蔵のチョコを…｣

引き出しを開けて、疲れた時の自分のために…と奮発した、お高いチョコを1粒取り出す。

｢ゼロに渡しておくね｣
｢へ？降谷には別でお礼するよ…？これは諸伏に｣

｢ゼロ、今忙しすぎて死にかけなんだ。だから、Aからのプレゼントだって言っておく｣

｢し、死に……これ、箱ごと渡してくれ｣


公安の闇。

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