19、元気な彼女 ページ19
ーー
「いらっしゃ…あれ?今日は早いですね」
「はい!珍しく仕事が早く終わっ……て…ア」
Aが来店するには、まだ早い時刻。
日が落ちる前のポアロ店内には、学校帰りの女子高生が沢山いて。
いつものように笑顔でドアを開けた彼女は、店内の様子を見て固まった。
……いや。ガラスなんだから、外からでも分かるだろ。
そのまま回れ右をしそうな雰囲気の彼女の細い腕を掴んで、引き寄せる。
『ここまで来て、帰るのは…ナシですよ?』
耳元でそっと囁けば、『ぅ、わぁぁあ?!あむ…っ、ぴ?!』なんて大声を上げた。
客の視線がこちらに集まる。
あぁ……炎上、するかもな。
念の為、風見に連絡しておくか。Aと僕に関する投稿がされたら、早めに捻り潰しておくのが1番だ。
こんなの容易い。
" 炎上させる " と本人に脅しはしたが、もし現実になった場合…。
本気で炎上を恐れているらしいAは、僕の傍から逃げる可能性がある。
仕方がないので、すぐにAから手を離して笑顔を見せる。
「カウンター席でよろしいですね?」
「……ハ、ハヒ」
拒否権など無いと悟った彼女は、大人しくカウンター席へと落ち着いた。
Aをここへ座らせるようになって、既に2週間。
分かりきっているから特に注文も聞かず、いつものようにコーヒーを提供する。
「…ありがとう」
なんて笑ったAは、今日も目を閉じて。その香りを楽しんでいた。
「ねぇ、Aさん」
「は、はい…?何でしょう…」
僕がカウンターから軽く身を乗り出して笑顔を見せれば、嫌な予感を察知したように肩を揺らした。
……珍しく鋭いな。
「次の休日、一緒に水族館行きませんか…」
「うおーーーい!!!あむぴッ!?!」
思った通りの反応。
彼女は今日も元気そうだ。
「あむぴ!どういうつもりなの…」
「ん?」
Aは、珍しくお怒りの様子。
" わざわざ " 女子高生のいる店内で、僕が水族館デートに誘ったのが気に食わないのだと思う。
怒っているのに。
いつものように、車を降りてから僕の部屋に着くまで、ずっと手を繋いでいるのも…
当たり前のように僕の部屋に入った瞬間『ただいま〜』と言うのも。
正直、可愛くて仕方ない。
彼女は何やら文句を言っているようだが。洗面台まで誘導して腕まくりをしてやれば、怒るのも忘れて手を洗い出す。
……流石にちょろくて、思いっきり吹き出した。
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真実(プロフ) - reさん» どの小説も読みやすかったです。一目惚れのお話は読んでいてこんな一目惚れの仕方もあるのかと感心しました!リクエストの件、ご無理はなさらずに形に出来そうであればお願いします!! (2021年8月6日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» ぇええ?!全部読んで下さったのですか…?!(;-;)貴重なお時間を私の小説に割いて頂いて…う、嬉しすぎます…!本当に幸せです、ありがとうございます(;-;)一目惚れのお話も読んで頂けて幸せです…!リクエストのお話もいずれ形にできるよう、頑張りますね!^^ (2021年8月6日 7時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - reさん» 読んでいてお互いの気持ちを考えているのが分かるのでキュン死するかと思っています(因みにreさんの小説は全部読破しております/リクエストした際に言っていた降谷さんの一目惚れの小説も読みました) (2021年8月5日 21時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» 真実さん、コメントありがとうございます…!2人の、お互いを大切に想う気持ちを伝えられているのなら、私はとても幸せです…(;-;)とても嬉しいお言葉、いつもありがとうございます…!2人の幸せのために、続編も引き続き頑張りますね!^^ (2021年8月5日 19時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - 夢主には夢主の苦悩、降谷さんには降谷さんの苦悩と言うものがreさんの小説から痛いほど伝わってきますね。けど、それはお互いを大切に思っての事だと思うと切ない気持ちになります。続編も楽しみにしてます!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年7月25日 15時