1、常連客の話 ページ1
ーー
唐突だが、僕のバイト先の常連客について話をしようと思う。
そろそろか、と。時計に視線を移した直後、タイミングよくドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
「…こんばんは!」
「今日もお仕事お疲れさまでした、Aさん」
平日の18時過ぎ。喫茶ポアロ店内。
" 安室透 " の笑顔を貼り付けて、いつものように彼女を出迎える。
「ありがとうございます……あの、今日も…ソファー席でも良いですか!」
「えぇ、平日で空いていますし…それはもちろん、構いませんが…」
彼女は『絢瀬A』さん。
平日の夜だけ、ポアロを訪れる常連客。休日には1度も見かけたことが無い。
梓さんによれば、職場が近いんだと。
つまり、仕事帰りに寄っているらしい。
『" 職場が近い " 、って結構前から通ってくれていますけど……私が夜のシフトの時、毎回は会わなかった気がするなぁ。安室さんが働くようになってから頻度が増えたのかな?』。
お客さんのいない、梓さんとの仕事中。たまたまAさんの話題になった時の事だ。
平日にしか訪れない彼女の事を思い出しながら
" そういえば…僕の出勤日には、いつもいらっしゃいます " と伝えたら。
梓さんは、『頻度が増えたんじゃないか』と。そう言った。
『安室さんの事が好きなのかも!』
なんて、ニヤニヤしながら付け加えられて。
僕の事が好き、だって…?
「あの、Aさん?」
「うん…?はい!…あむぴ、コーヒー下さい」
いつものソファー席に座った彼女は、いつものようにコーヒーだけを注文して。
いつものように僕を『あむぴ』と呼んだ。
「コーヒーですね、少しお待ちください」
笑顔でそう告げて、カウンターへと向かう。
僕に好意を寄せる客は、少なくない。
誰が言い始めたかもう分からないが、何故か『あむぴ』と呼ばれることも多いし、わざわざ僕の居る時だけを狙ってポアロへ来る女性も一定数いる。
当たり前だが…その全員が例に漏れず、" 好きです " アピールをしてくる。
それはもう、笑顔を作るのが嫌になるくらいに。
「…」
僕と近くで話したいから、店内が空いていてもカウンター席へ座る。
勝手に『あむぴ』なんて呼んで、聞いてもいないのに自己紹介をされる。
仕事中にも関わらず、一方的に話しかけられて……連絡先を聞かれて、渡されて。
正直に言えば、そういう客に対してはうんざりする事ばかりだが…
仕事故、 " 安室透 " として笑顔を見せない訳にはいかない。
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真実(プロフ) - reさん» どの小説も読みやすかったです。一目惚れのお話は読んでいてこんな一目惚れの仕方もあるのかと感心しました!リクエストの件、ご無理はなさらずに形に出来そうであればお願いします!! (2021年8月6日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» ぇええ?!全部読んで下さったのですか…?!(;-;)貴重なお時間を私の小説に割いて頂いて…う、嬉しすぎます…!本当に幸せです、ありがとうございます(;-;)一目惚れのお話も読んで頂けて幸せです…!リクエストのお話もいずれ形にできるよう、頑張りますね!^^ (2021年8月6日 7時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - reさん» 読んでいてお互いの気持ちを考えているのが分かるのでキュン死するかと思っています(因みにreさんの小説は全部読破しております/リクエストした際に言っていた降谷さんの一目惚れの小説も読みました) (2021年8月5日 21時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» 真実さん、コメントありがとうございます…!2人の、お互いを大切に想う気持ちを伝えられているのなら、私はとても幸せです…(;-;)とても嬉しいお言葉、いつもありがとうございます…!2人の幸せのために、続編も引き続き頑張りますね!^^ (2021年8月5日 19時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - 夢主には夢主の苦悩、降谷さんには降谷さんの苦悩と言うものがreさんの小説から痛いほど伝わってきますね。けど、それはお互いを大切に思っての事だと思うと切ない気持ちになります。続編も楽しみにしてます!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年7月25日 15時