一番にはなれない ２【💛】

19 ページ9

・




朝からニュースを流し見つつ、眠気覚しのコーヒーを啜る。いつも通りの月曜日。
普段なら「この話題現社の授業で触れようか」とか「そろそろYシャツクリーニングに出さなあかんな」なんて考える、忙しいながらもゆっくり出来る時間。

でも今日は、つい数日前にここに座っていたAの事を考えていた。
....ちゃんと元気に登校してきたらええんやけど。

そんな事を考えながらいつもの様に学校に着いて、ホームルームの時間。カーディガンを羽織ったAは普段通り席に着いていた。
その時に安心しきってしまって、それ以降ではっきりと記憶しているのはその次の木曜日の事だ。

まだ本調子じゃないのか、すぐに帰ってしまう日が続いたA。
それでも、課題提出の日だけはそうはいかない。

放課後プリントの束を手に現れたAは、僕を見るなり「この間は本当、ご迷惑をお掛けしてすみませんでした....」と、申し訳なさそうに頭を下げた。



「そんな、気にし過ぎやって。....でももうすっかり元気になったみたいやね、安心したわ」

「はい、ご心配お掛けしました....。」



そう言ってにこり、と笑った彼女は「じゃあ....失礼します、さようなら」とすぐに帰っていった。

....その顔に貼り付けられた表情は、僕の得意な笑みと同じもので。
ばたん、と少し大袈裟に鳴ったその扉の音と同時に、脳内にひとつ考えが浮かぶ。


＿＿僕が、そんな顔をあの子に覚えさせてしまったのかもしれない。


この時湧き上がった、彼女への罪悪感。
これこそが僕自身が自分の心と向き合うきっかけ、だったのかも知れへんな。




・

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す