一番にはなれない ２【💛】

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レトルトのお粥をレンジで温め、水の入ったコップと薬の箱を一緒にトレーに乗せて寝室に戻る。暖かい布団の中とはいえ、まだ苦しそうで。「お粥持ってきたけど、起き上がれそう？」と声を掛けると、ゆっくりと起き上がって自分でそれを食べ始めた。

....てっきり「食べさせて下さい」とかまた馬鹿な事を言い出すんじゃないかと思っていたのに、それどころか彼女はまだ妙な罪悪感を抱えているらしい。無理をしているのははっきりと見て取れるのに、僕はどうすればいいかわからなくなってその横に座って待つしか出来なかった。


数十分掛けてそれを食べ終えた彼女に、薬とコップを差し出して。
素直にそれを受け取って飲んだAから空になったコップを受け取り、そのまま部屋を見回す。
スポーツドリンクは枕元に置いてあるし、ゴミ箱とかティッシュとか、ある程度の物は見ればわかる場所に置いてある。....これ以上、この部屋に居る必要もないだろう。

枕元に置いてあるリモコンを操作して電気を常夜灯に切り替え「じゃあ、ゆっくり寝なね」と声を掛けてから立ち上がる。トレー片手に部屋を出ようと扉を開けた、その時。



「....せんせ、」



後ろ髪を引かれるその弱々しい声に、思わず立ち止まり振り返る。
「せんせい、」ともう一度呼ばれてしまっては、戻るしかない。その枕元に座りトレーを置いて、「どした」と声を掛ける。



「....きす、してください」

「........あのなぁ」

「口じゃなくて、いいです


さみしいんです、せんせ....」



そう呟いて瞼を閉じた彼女のその左目から、また雫が一粒流れ落ちる。
....どうやら、僕は彼女のその表情に弱いらしい。



「....今の僕は、先生じゃないから」



小さく呟いて、その頭にそっと触れる。
小さい子をあやすように暫く撫でてから、すっかり乾いた柔らかいその髪を少し持ち上げて、そこに唇を押し当てる。

すうすうと寝息を立てるAを起こさないように、そっと立ち上がり部屋を出る。
そのまま食器を流しに置いて、力が抜けたようにその場にしゃがみ込む。


....ほんま何してんねやろ、僕。


さっさと眠ってしまおうとソファの上に横になって、一向に止みそうにない雨の音を聞きながら目を閉じる。

それでも頭に浮かんできたその顔に、その感情に。
何も気が付いていないフリをして、そのまま眠りについた。




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