え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。THE SECOND 【となりの坂田。】

・ ページ29

坂田side

｢別に仕事ってのに関してはほんまやしええんちゃうん？｣

りんちゃんのクッションを弄びながら俺に聞く志麻くんにため息をついて首を振る。

｢そういう問題ちゃうんやって。

＿＿＿＿やっぱ、俺って一般人やった方が迷惑かけやんで済んだよなぁ……｣

そんなことを言ってもしょうがないのはわかっている。

そもそもこんな厄介なことになったのはセンラのせいでもなく、歌い手として活動しはじめたときにAに報告してなかった他の誰でもない俺のせいだから。

それでも、どうしても憂鬱な気分になる。

もしも、俺が一般人だったなら。

それなら、きっとAに嘘をつかずに済んだんだろうな。

もしも、嘘をつかずに済んでいたなら。

それなら、後ろめたい気持ちなんて感じずにAに接することが出来ていただろうな。

そう思い出すと、今まで心の中に押し込んでいた“もしも”がたくさん溢れだしてきた。

もしも、もしも、もしも、もしも。

｢お、おい、坂田？
ちょ、怖いんやけど、なになになに？｣

〈坂田、おい坂田!!!〉

〈え、もしかして病みモード入っちゃった感じですか？
Aちゃん呼んだ方がええんちゃいます？〉

ボソボソと呪いのように“もしも”と“それなら”を繰り返す。

もしも、それなら、もしも、それなら…………

そうだ、もしも。

もしも、俺があのとき間に合っていたなら＿＿＿。

“おい斎藤ッ、Aがどうかしたん＿＿＿＿A?!
な、なんなんこれ?!”

“私にだってわかんないよ!”

もしも、そうだったなら。

俺がもっとはやく、彼女の元に行けていたなら。


“もういや、なんで私がこんなことされなくちゃいけないの……？”


君((名前))は、泣かないですんだのに。

Aだけじゃなくて、もっと他の人にしてもそうだ。

全てが俺のせいだとは思わないけれど、もしも間に合っていたならもうちょっとマシな結果になってだろうな。

あ、あかん、ほんまに病み期かも。

ネガティブな思想マジで止まらん。

あ〜、Aに会いたい。

でも、そろそろ自分のメンタルくらい自分で管理できるようにならなあかんよな…

でもそんなんできる気せえへんし。

でもAに頼ってるばっかじゃあかんし……,

そんな俺の思考の悪循環を断ち切ったのは、けたたましい着信音だった。

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す