え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。THE SECOND 【となりの坂田。】

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no-side

一ノ瀬Aが颯爽とオフィスを出た後、1人の男性社員が膝からガックリと崩れ落ちた。

｢一ノ瀬先輩……彼氏いたの?!?!?!｣

その叫びがきっかけとなって今まで止まっていた社員の中の空気が動き出し、男性社員の多くは溜息をつき、女性社員はきゃあっと歓声を上げた。

｢えー、普通に考えたら彼氏くらいいるでしょ！
だってあんなにキレイなんだもん｣

女性社員の一人がそう言うと、社内の人間が憂いを帯びた表情でため息をついた。

そう、一ノ瀬Aは美人であった。

絶世の美女という訳では無いけれど、美人という部類に入ることは間違いない。

ふっくらした桜色の唇や切れ長のぱっちりした目とつんと尖った小さな鼻は小さな白い顔に正確に配置されていた。

親譲りの白い肌に、これまた親譲りだという少しくせ毛気味の黒髪がよく映えていた。

そのうえ上品で優しく、しっかりしていて仕事もできる。

つまり、それなりにはモテていた、ということだ。

ガックリと床に座り込む磯田は特に熱心であった。

｢えー、磯田くん知らなかったの？
あたしこの前ごはん行った時聞いたよ｣

｢マジ?! どんな人って言ってた？
えー、一ノ瀬先輩の彼氏ってどんな人なんだろ？

ぜったいスパダリイケメンじゃん…｣

｢うーん、でもおっちょこちょいって言ってたよ。

この前ショッピングモールで迷子になったかと思えばキッズエリアで幼稚園児とはしゃいでたって｣

｢キッズエリア…｣

｢うん、あと住所変更できてなくて彼氏さんのお父さんのところに父の日に送ったいくらが自分のところに来たらしい。
明後日ぐらいにカニも来ると思うって笑いながら言ってたよ｣

｢あほだ…｣

そんな女性社員らの話を膝をつきながらもしっかりと一言一句聞きのがさずに聞いていた磯田は突然ばっと顔を上げた。

｢待てよ…

＿＿＿＿＿顔だけなら俺、ワンチャンイケるんじゃね？｣

磯田というこの男、実は顔がいい。

もし街頭アンケートで調査したのならば9割の人間は彼のことをイケメンと評すだろう。

しかし、彼は＿＿

｢いやいや、無理に決まってんでしょ。
人の彼女とるとか人として終わってるからね｣

｢えー、一ノ瀬先輩彼氏さんのこと話す時すっごい嬉しそうだもん、磯田勝てないよ｣

｢磯田てめぇバカだろ｣

＿＿＿彼は、ドがつくほどの馬鹿だった。

大事なことなのでもう一度言おう、彼は馬鹿だった。

｢いや！俺はやってみせる!!!｣

そう意気込む彼に社員は大きな溜息をついた。

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