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思い当たらない本音 ページ9

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四時限目の開幕を伝達するチャイムが喧しく喚いた数分後、形だけ教科書を開いて態度悪く頬杖をついてだらしなく授業を行う先生の姿を眺めていた。相も変わらず死んでいる瞳の奥には、僅かな生気が揺らめいている。夏とは違う、温度を得た。

ふと、校庭を駆ける生徒を視界に収める。キャッキャと楽しそうに声を上げる彼らは、希望を胸に抱いていた。青春という言葉を過信しているようにも思えるが、地球のエネルギーを身体で受け止めているところは、心做しか尊敬できる。カーテンの隙間から射し込んでいる光が、私を照らすことはないけれど。





「先生は恋に破れて死にたいって思ったこと、ありますか?」

「あ?あるわけねーだろ、ンなのバカのすることだ」

「でも今、Kの気持ちは分からんでもないけどって言ったじゃん!」

「親友に裏切られたってところを考慮してそれっぽいこと言った方が良いと思ったからな。ま、恋のイロハはいちご100%を見ときゃ学べっから各自予習しておくよーに」

「この前はToLOVEるを予習しろって言ってたくせに!」

「うっせーなヤドン。そんなんだからテメーはいつまで経ってもヤドンのままなんだよ。さっさと海に行ってシェルダーに噛まれてこい」






ぼんやりと聞き流したそんな会話。夏目漱石の『こころ』という作品は、正直長い上に文字が小さいので読む気にはならなかったが、先生はやけに丁寧に一文ずつ説明していた。しかしヤドンの質問を受けて、恋に破れて自ら命を落とすだなんてバカのすることだと言い切ると、そこから急速に持論を述べる展開する。





「そいつにどんな事情があったって、死んじまったら終ェだろ。今まで悩んできた時間も、無駄になるってことだ」





──……死んだら、終わり。
その言葉は、ズキズキと敏感に反応した心臓に追い討ちをかけるようにして抉った。やけに眩い光に包まれているのにも関わらず、人々に寄り添う力は持ち合わせていないのに、脳内にこびりついて離れない。





「逃げてェ時こそ生きるんだよ。辛くても息してりゃ、どうにかなる」

「……そんなの、」





そんなの、綺麗事でしかないじゃん。

………………最後まで言い切る覚悟は、出来ていなくて。





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純粋な上に無粋である→←*



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こころ(プロフ) - 言葉遣いや、主人公ちゃんの気持ちの表現の仕方がすごい好きで、読んでいて面白いです。ゆっくりで良いので更新待ってます! (2020年9月30日 20時) (レス) id: efbab0acfd (このIDを非表示/違反報告)
小笠原@銀トッキー - この主人公のノリ、好きです!更新頑張ってください (2020年5月27日 12時) (レス) id: d7fcd729d7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:堕天使 | 作成日時:2019年9月20日 20時

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