身勝手な指図は規則的 ページ6
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「んじゃ、また明日ね！」
「うん、またねー！」
自転車のベルが、唐突に一日の終わりを告げた。名残惜しそうに陰る校舎は、その図体の割には寂しがり屋なのだろう。これから否が応でも忙しなく送られ続けることとなる日常が、正式に取り決められた感覚だ。どうしようもない虚無感と似ている。
一度たりとも思ったことはないけれど辞書を引けば該当してしまう顔も知らない後輩という二文字が、満月に照らされた海のようにキラキラとした表情で、手を振っていた。出会いも、別れも、まだ何も知らないみたいで苦しかった。
"放課後映画館計画"を強気に破綻させたので、スクールバッグを自転車のカゴに押し込む。平然と始まり平然と終わりゆく時に翻弄された今日とは、早くさよならしたいのだ。
「(…………ざまーみろ)」
人間に同情することのない信号が、容赦なく赤に切り替わったせいで舌打ちをこぼした私は、アスファルトの上で貫禄を失っている煙草の吸い殻に視線を落とす。むせ返りそうになるあの匂いを嗅ぐと無条件に胸が締め付けられるのだが、今目の前にあるそれからは何の覇気も感じない。ま、現に破棄されてるわけだし。
しかし、部屋に染み付いているはずの匂いも、人づてに得られるとあんなに変わるものなのか。それとも先生だから？だとしたら、そこに捨てられている吸い殻は、自分に似ているかもしれないな。
ああなんてこと、信号機よりも先に同情を覚えてしまった。ざまあみろとか言っちゃってたのに。
そんなことを考えていると、後ろから風を切ってきた自転車が颯爽と私を追い越して横断歩道を渡る。どうやらすっかり青へと切り替わっていたようで、気付けば何台もの自動車が、酷く白んだ眼差しをこちらに届けていた。とても冷たくて、鋭い。その割には斬れ味が悪そうな、錆びた刃物。そしてどこか、上から目線である。
……止まれだの、進めだの、どれだけ横暴なんだ。意思を持ったら、削ぐくせに。
無意識的に殺していた息を慌てて吐いて、吸う。三回繰り返した時には、青信号は点滅していた。自転車も、時間も、前にしか進まないのになあ。────脳に酸素が回っていない状態で曖昧な欠落感を含んだまま、そう思った。
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こころ(プロフ) - 言葉遣いや、主人公ちゃんの気持ちの表現の仕方がすごい好きで、読んでいて面白いです。ゆっくりで良いので更新待ってます！ (2020年9月30日 20時) (
レス) id: efbab0acfd (このIDを非表示/違反報告)
小笠原＠銀トッキー - この主人公のノリ、好きです!更新頑張ってください (2020年5月27日 12時) (レス) id: d7fcd729d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：堕天使
| 作成日時：2019年9月20日 20時
