捌 親友として ページ8
「男がギャーギャー騒ぐな、鬱陶しい。お前が今することは、己の無力に嘆いて謝罪することか?絶望することか?違うだろ」
お前はそんなみっともねぇ男じゃないだろ。どんなどん底でもゴキブリみてぇに這い上がってくるような生命力を持った化け物だろ。
「お前の奥さんは、もう長くないんだろ。人間ってのは、一人は嫌いなんだよ。どんなに強がっても、孤独になろうとも、俺たちは大切なもん背負って生きてんだ」
今お前がすることは、その大切なモノ放ったらかしてまで、柱の任務を遂行することか?お前の無事を祈る女を捨ててまですることか?
「お前にも、大切なもんを守る義務があるだろう」
「お前を、むざむざ死なせてもか?」
糸雫、俺の鼻先に落ちた。それをキッカケに、大粒の雨が空から槍のように降り注いでくる。
重く鋭く、冷たい。燃えた灯火を消し去るように。
「勘違いすんなよ」
俺は親友の胸ぐらを掴み、壁に叩きつける。こんな死にかけの暴力なんぞ痛くも痒くもない。避けようと思えば避けれるだろうに、アイツは避けるどころか受け身も取らない。
「お前が俺を殺したんじゃねえ。俺は見ず知らずの柱に命捨てたんじゃねえ!お前がお前だから、俺は胸張ってお前に命捧げたんだ!」
柱だからってだけで、俺たちがお前のために死んだと思うなよ。俺も新人も、誰も柱のためなんぞに命はらねぇよ。
「俺たちはお前に、煉獄 槇寿郎に命捧げた!お前は、俺たちが命張って守る価値がある男なんだよ!お前だったから、俺たちは胸を張って前に進めたんだ!!」
俺たちを哀れむなら、まずはテメェが幸せになってからにしろ。
俺の最期の説教だ。有り難く受け取れよ、親友。
俺はここで死ぬ。悔いはない。あるとすれば、Aの花嫁姿を見れなかったことくらいだ。
なぁ、親友。俺たちの死を背負うなら、責任持って幸せになれよな。俺たちが守った人生、お前自身が無駄にしないように。
「お前の親友になれたことが……俺の誇りだ」
だから、そんな不安そうな面すんなよ。
前を向いて歩け。お前が前に向く限り、お前が生きようとする限り、俺たちの死は無駄じゃない。
生きて幸せになれ、槇寿郎。それが俺たちがお前に求める贖罪だ。
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squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月2日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます!続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです!この小説を書けて良かった……! (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです!何度も読み返したくなる夢小説は久々です!ありがとうございました! (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます!読み返していただけるなんて光栄です!ご期待に添えられるよう頑張ります! (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:squid | 作成日時:2019年3月31日 19時