陸 兄と義姉 ページ6
煉獄 杏寿郎の許嫁となってから、私は度々杏寿郎の元を訪ねた。鍛錬もそうだが、一応許嫁だからだ。別に会いたかったからとかそんなことはない。
鍛錬するだけでは詰まらないので、時々お互いの話をしながら時間を潰したりもした。
なんでも、杏寿郎には弟がいるらしい。母親は病で起き上がれない体で、治す手段はないと、悔しそうに話してくれた。
杏寿郎の母親と会いはしたが、気高く美しい女性だった。本当に杏寿郎の母親かと疑うほどに。
数日後、私の父と杏寿郎の父が任務のために家を数日空けることになった。杏寿郎の父は鬼殺隊の中でもトップクラスの柱の階級に就いており、1つ1つの任務の難易度は低くはない。私の父もまた、柱ではないものの、歴とした鬼殺隊のメンバーだ。
父上たちが頑張っているのに、自分たちが腑抜けていてはいけないと、私は杏寿郎と、彼の弟の千寿郎と鍛錬をしていた。内容はいつものように素振り、では味気ないので少し内容を変える。
「名付けて鬼ごっこ」
「それはただ遊んでいるだけなんじゃ……」
兄の杏寿郎とは違ってやや真面目すぎる千寿郎くんの言葉に、私は首を横に振る。子供の遊びと軽んずるなかれ。ただの追い回す鬼ごっこではない。
「木刀を持ったまま逃げてもらう。いざという時、刀が邪魔で走れない、なんて話にならないでしょ」
「なるほど!」
納得したように力強く頷く杏寿郎。一方で、千寿郎くんは、やっぱり遊びたかったんじゃ、と苦笑を浮かべている。
この2人、見た目こそ見分けが付きにくいが、表情がまるで正反対だ。
「てことで、最初の鬼は千寿郎ね。頑張って!」
「って僕ですか!?」
「頑張れ、千寿郎!」
兄と義姉(なるとは言ってない)に鬼役を押し付けられ、千寿郎はなぜ僕が……と天を仰いだ。
結局2人を捕まえられなかった千寿郎は、弁当を2つ、庭の中央に置き、手軽な罠を仕掛けた。
さすがにかかるわけないか、と苦笑する千寿郎だが、ほんの数分後に、2人の人間が見事に罠にかかっていた。
「ぎゃー!誰よこんな所に落とし穴掘ったのは!」
「動くなA!弁当が崩れてしまう!」
弁当で吊られる兄と義姉に、千寿郎は哀しげにため息をついた。
彼らの捕獲のため使われた弁当は、2人が後々美味しく頂いたそうだが、強いて言うならタラコ入りおにぎりが食べたかったとのこと。
知るか、と千寿郎の心は叫んでいた。
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squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月2日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます!続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです!この小説を書けて良かった……! (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです!何度も読み返したくなる夢小説は久々です!ありがとうございました! (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます!読み返していただけるなんて光栄です!ご期待に添えられるよう頑張ります! (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:squid | 作成日時:2019年3月31日 19時