検索窓
今日:3 hit、昨日:5 hit、合計:116,346 hit

外伝【壱】 任務の後 ページ40

上弦の参の鬼。過去に数えきれないほどの柱を葬ってきた、強力な鬼の襲撃を受けた私たちは、ほぼ怪我人はいなかった。
私は重症のようで、胸の傷は塞がっても、所々の骨が折れていた。【桜の呼吸】は、傷を癒すというよりも、一箇所に受けた大きな傷を、体全体に薄く広くに広げるという、怪我によっては全く無意味になる技だった。
しかし、この呼吸のおかげで、私が一命を取り留めたのもまた事実。今回は感謝するとしよう。
さて、今私はどこにいるのかというと、蝶屋敷という蟲柱の屋敷らしい。自宅で見てもらうより、ここよりもここの方が医療器具があるから診てもらえ、と杏寿郎に言われた(脅迫された)

「Aさん!」

私の病室に入ってきたのは、竈門 炭治郎という鬼狩りの少年だった。その隣では、どこかボーっとした雰囲気の、けれど可愛らしさ顔立ちの少女、禰豆子がいた。本当に鬼かこの子は。

「いらっしゃい。ちょうど寂しかったから、来てくれて嬉しいわ」

別に、杏寿郎が来てくれたんじゃないかと期待していたわけじゃない。3日も会いに来てくれないなんてとか、思ってない。断じてない。

「……寂しいんですか?」
「えっ……」

心を読まれたようで、驚いて炭治郎の顔を凝視していると、悲しい匂いがしたので、と困ったように微笑んだ。
炭治郎は、鼻が効く少年のようだ。
そんな私を慰めようとしてくれているのか、禰豆子がベッドによじ上がり、私の頭を撫でてくれた。妹の相手でもしているような、優しい手付きだった。

「あっ、こらダメだぞ?禰豆子」

さすがに年上の人に対して、妹のように接するのは良くないと感じたのか、炭治郎が禰豆子を赤ん坊のように抱えると、すみませんと頭を下げた。

「気にしないで……確かに寂しいし、もしかしたらもう、アイツが来てくれないんじゃないかって不安になるけど、そうなったら私から会いに行けばいいもの」

人に手を出した責任は取れよってね。
口元に手を添えて、いたずらっぽく笑う私に、炭治郎は安心したような笑みを浮かべた。

「やっぱり、Aさんと煉獄さんは、似てますね。匂いもそうなんですけど、強くて優しいところとか」
「え!?」

心臓が速まる。
今まで私は、今までアイツを目標に修行してきた。けれどその差は、どんどん広がっていくばかりで……だから、私と杏寿郎は似ていると言われたのは、なによりも嬉しかった。

「そっか……」

私はいつしか、あの眩しい炎に、彼に近づいていたのだ。

外伝【弐】 任務の後→←外伝 小さくなった炎柱



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (77 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
121人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 女主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月2日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます!続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです!この小説を書けて良かった……! (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです!何度も読み返したくなる夢小説は久々です!ありがとうございました! (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます!読み返していただけるなんて光栄です!ご期待に添えられるよう頑張ります! (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:squid | 作成日時:2019年3月31日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。