卅壱 作戦 ページ31
夜を明るく照らす赤。大地がひび割れるような凄まじい音と、今にも爆発しそうな緊張感。
「杏寿郎には劣るが……お前も強いな。そうだ、お前も鬼にならないか?」
頸を守るように、私の攻撃を腕で庇った鬼は、切り落とされた腕を見ると、不敵な笑みを浮かべる。
そういえば先ほども、この鬼は杏寿郎を鬼に勧誘していたと思い出す。永遠に生き、強さを極める魅力を語る鬼に、私は何1つ共感できない。
「鬼にならない」
「……そうか、残念だ」
全く表情を崩さず鬼が構えると、その下に円の陣が描かれる。どんな攻撃かは分からないが、頭の中で警報が鳴り響く。これは危険だと。
【術式展開 乱式】
衝撃波のようなものが発生し、広範囲な上に威力も決して弱くはない。当たりどころによっては、命に関わる。
【炎の呼吸 伍ノ型 炎虎】
虎のような形をした炎を纏い、衝撃波を斬り、そのまま鬼との距離を詰める。
「はぁ!」
【炎の呼吸 壱ノ型 不知火】
耳元で風を切る音を感じながら、刀を振り下ろす。刀が斬ったのは、鬼の頸ではなく空気だった。先ほどまでいたところに、鬼はいなかった。
「遅い」
背後から声が聞こえ、振り返ったときには、もう遅かった。人の腹など豆腐のように突き刺すであろう鬼の拳が、私の腹に叩き込まれる寸前だった。
あ、流石にまずい。痛みを堪えるため、私はきつく目をつぶった。
けれど、いつまで経っても痛みは襲ってこない。
「すまない、遅くなった!」
それと同時に、あの人の匂いがした。聞くだけで、心が安心できる声。
目を開けると、所々が破れた炎を象った羽織が風で揺れ、誰よりも頼もしい背中がそこにはあった。
遠くからははっきりとは見えなかったが、杏寿郎は重症だった。普通ならば、立つこともままならないだろうに。
「アンタ……そんな傷じゃ無理だって!」
「Aを守るためならば、この命喜んで差し出そう!」
こちらに視線を向けず、杏寿郎は、完全に傷の癒えた鬼を見下ろす。
「杏寿郎、何も言わずに聞いて」
杏寿郎だけでは、あの鬼には勝てない。私だけでももちろん、勝てやしない。なら、2人ならどう?
作戦というには単純な作戦に、杏寿郎はかなり渋っていたが、最後には納得してくれた。
「……死ぬなよ」
「お互いにね」
私たちは肩を並べて、鬼に刀を向けた。
死なせない。誰1人として、欠けさせない。
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squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月2日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます!続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです!この小説を書けて良かった……! (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです!何度も読み返したくなる夢小説は久々です!ありがとうございました! (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます!読み返していただけるなんて光栄です!ご期待に添えられるよう頑張ります! (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:squid | 作成日時:2019年3月31日 19時