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卅 声 ページ30

目の当たりにしたのは、異次元の戦いだった。力と力、速さと速さの戦い。
あんな理不尽な強さを持つ鬼と戦うのは、杏寿郎だった。どちらも攻撃と防御を交互に行なっている。
同じ戦闘能力の人がいるとしよう。技が決まるのも決めるのも困難な相手で、なかなか勝負がつかないのは想像に難くない。ならば何が勝敗を分けるか、それは力や速さ以外の……スタミナや頑丈さだ。
そしてそれらは、人間である杏寿郎は、それらは圧倒的に劣っている。つまり、それは杏寿郎の敗北を意味していた。

「……!」

一瞬だけ、鬼と目が合った気がした。それとほぼ同時に、杏寿郎の目が見開かれる。

「稀血か」

ゾッとするほど、冷たい声。金縛りにでもあったかのように、身体が恐怖で動かない。でも、それじゃあダメだと、刀を握る。

「来るな!」

初めて聞いた、杏寿郎の怒声に、身体がビクッと震える。杏寿郎に、あんなに鋭い視線を向けられたのは、初めてだったから。
どうしたらいい?何をすればいい?死んでしまう、父さんのように、杏寿郎も。それは、嫌だ。
なのに、身体が動かない。

「鬼になると言え!杏寿郎!」

再び鬼の声が聞こえたときには、杏寿郎は怪我を負っていた。重症というわけではないのだろうが、この戦いでは、小さな傷1つでも勝敗に関わる。
杏寿郎の動きが、鈍くなりつつある。

「あの人間が大切か?杏寿郎」

射抜くような視線が、私を貫いた。それと同時に距離を詰められ、値踏みされるように足元から頭のてっぺんまでをジロジロと見られる。

「ひっ……」

怖い、殺される。そんな恐怖心に襲われた。今までに会ったどの生物とも違う、肉食獣のような視線。
手が震える。鬼の後ろで、杏寿郎が逃げろと訴えてくる。型を使おうにも、鬼が私の近くにいるから、下手に手を出せないでいる。

「お前が気になって、杏寿郎が俺に集中できないらしい。……邪魔だ、死ね」

鬼が、私の頸をはねようと手を伸ばす。
このまま死ぬのかな、それなら……父さんに会えるかも。

「A!」

杏寿郎が私を呼ぶ声に、私の震えは吹っ飛んだ。
ここで死んだら、父さんに会える?甘ったれるな!

【炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天】

刀を抜き、鬼の手を斬る。
先ほどまで震えていた私が、突然動き出したからだろう、鬼は驚愕の表情を浮かべると同時に、拳が飛んでくる。
速いけど、見えないほどじゃない。ギリギリの所で躱し、姿勢を低くし、相手の頸目掛けて刀を振る。

【壱ノ型 不知火】

卅壱 作戦→←廿玖 爆弾飯



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squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月2日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます!続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです!この小説を書けて良かった……! (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです!何度も読み返したくなる夢小説は久々です!ありがとうございました! (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます!読み返していただけるなんて光栄です!ご期待に添えられるよう頑張ります! (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:squid | 作成日時:2019年3月31日 19時

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