拾漆 羞恥 ページ17
眩しい陽の光に目を覚ますと、慣れ親しんだ匂いが鼻に届く。瞼を開けると、目と鼻の先にアイツの寝顔があった。どうやら、私はアイツの肩を借りて寝てしまっていたらしい。
同時に、今までにないほどの羞恥心にかられた。
寝顔を見られた。しかも、よりによってコイツに。
「む……起きたか!」
朝っぱらから元気のいいことだ。声がでかい。
そういえば、なぜこんなことになったのだろう。杏寿郎の肩に頭を預けたまま、昨日までの記憶を辿り、繋げて、ようやく思い出した。
そうだ。私は昨日鬼に負けて……。
あまりの恐怖に、吐き気がした。あの、狂気に歪んだ目が、生々しく思い返される。
「大丈夫か?」
そんな私を落ち着かせるように、杏寿郎が私の手を握ってくれる。男らしい、大きく力強い手だった。
あのとき、杏寿郎が来てくれなければ、私は間違いなく死んでいた。
初日がこれでは、先が思いやられる。
「杏寿郎」
「ん?」
いつまでも肩を借りたままでは申し訳ないが、身体に力が入らない。昨晩、型を使いすぎたのだろう。実際に、今まであんなに型を使うことはなかった。
「……………………ありがと」
照れくさくなって、私は杏寿郎の顔をまともに見れなくなり、顔の向きを変えようとした。けれど、突然顎を掴まれ、強引に杏寿郎と向き合う形にさせられてしまう。
「な、何するのよ」
杏寿郎は何も言わず、真っ直ぐにこちらを見てくる。嫌でも居心地が悪くなるじゃない、どうしてくれんの火頭。
せめて視線だけは、と目を泳がせるも、杏寿郎の無言の圧に泣きそうになる。
「もう!さっきからな……」
何なの?と聞こうとしたが、口を塞がれた。指でジェスチャーされたのなら、まだ良かった。
気付いた時には、目の前に杏寿郎の顔があった。頬に触れるアイツの髪がくすぐったい。でもそれ以上に、柔らかな何が私の唇を触れた。
「あっ……」
触れるだけのキス。ただでさえ混乱している頭が、さらに混乱し始める。唇を舐められた途端、私は杏寿郎の胸を押し返していた。今までで1番強く。
「あ、私!川がないか探してくる!」
咄嗟にそう言い残し、私は逃げるように杏寿郎から離れた。先ほどまで動かなかった身体に鞭を打って走る。
こんな顔、見せられるわけがない。顔が熱い。間違いなく、今の私の顔は真っ赤に染まっている。そんな顔を、アイツに見せられるわけがない。
「……惜しい!」
アイツがそんなことを呟いているとも知らずに、私は両手で顔を覆った。
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squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月2日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます!続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです!この小説を書けて良かった……! (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです!何度も読み返したくなる夢小説は久々です!ありがとうございました! (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます!読み返していただけるなんて光栄です!ご期待に添えられるよう頑張ります! (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:squid | 作成日時:2019年3月31日 19時