検索窓
今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:116,341 hit

拾陸 強き人へ ページ16

【全集中 炎の呼吸 奥義】

音がする。風邪を切るような、呼吸の音が。
歪んだ視界の端で、鬼の手が私の頚を捉えるのを感じながら、私は両目を閉じた。

【玖ノ型 煉獄】

幻聴か、アイツの足音が聞こえる。アイツが私を呼ぶ声が、悲しいくらいに耳に響く。
次の瞬間には、鬼の断末魔が響き渡った。一体何が起きたのかと、私は閉じていた双眸をもう1度開くと、そこには先ほどまでいた無数の鬼の姿はなく、代わりに、太陽のように眩しい男がいた。

「無事か!?」

アイツにしては珍しく、血相を変えて私の側に駆け寄ってくる。幻ではないかと思ったが、私の頬に触れるその手は温かく、実体があった。
来てくれるなんて、思わなかった。また会えるなんて思わなかった。
怖かった、このまま死んで、2度と会えなくなるんじゃないかって。怖くて怖くてたまらなかった。
不甲斐なくも、涙が流れる。止めようにも止まらなくて、穴があったら入りたい。

「きょうじゅろう……!」

突然泣き出したからか、戸惑う杏寿郎。その胸に飛び込むように、私は倒れ込んだ。
ありがとうと言いたいけれど、それよりも恐怖心の方が勝って、子供のように泣きじゃくった。父さんのときに、もう泣かないと決めたのに。

「Aは泣き虫だな!これからは俺が守る!安心して休め!」

雰囲気ってもんがあるだろとツッコミたくなるのだが、アイツらしくて、思わず笑ってしまう。
感覚で抱き抱えられているのを感じながら、私は深い眠りについた。その直後、東の空に陽の光が差し込んだという。
眠りについた私の頭を、杏寿郎は豪快にワシワシと撫でる。よくやった、頑張ったな、と賞賛する声。

「……好きだ!」

直後、そんな声が聞こえた気がしたが、再び目を覚ましたときには、私の頭の中に残っていなかった。

拾漆 羞恥→←拾伍 誇り高き人へ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (77 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
121人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 女主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

squid(プロフ) - 琥珀さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月2日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - 完結おめでとうございます!続編楽しみにしてます。 (2019年5月2日 5時) (レス) id: d2016535f2 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 時飴さん» コメントありがとうございます!こちらこそ、読み返してくださるほど楽しんでいただけて何よりです!この小説を書けて良かった……! (2019年5月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
時飴 - あぁ、完結か でもとても楽しい2、3日でした。外伝もこの先楽しみです!何度も読み返したくなる夢小説は久々です!ありがとうございました! (2019年5月1日 19時) (レス) id: 2a7a7ec279 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - 雪菜さん» コメントありがとうございます!読み返していただけるなんて光栄です!ご期待に添えられるよう頑張ります! (2019年5月1日 14時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:squid | 作成日時:2019年3月31日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。