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壱 豪快 ページ2

わたしの父は、鍔職人だった。一部では名の知れた鍔職人で、鬼殺隊の柱に鍔を作ったことがあるらしい。

『剣士の命が刀であるならば、それを飾る鍔は、剣士の意思だ』

わたしが幼い時から、父に口酸っぱく言って聞かされた言葉だ。
オモチャを作る感覚で、鍔に触れるな。触れた瞬間に、お前の手を刀で斬り落とすからな、とドスの効いた声で脅された。あれはまだ、わたしが物心ついたか否かの頃だった。
親のやる事に興味を示すのは、普通のこと。わたしもそれに漏れず、鍔を作ろうとした。すると、両親は喜んで、わたしに鍔作りを教えてくれた。
そうして出来上がったのは、鍔というには少しばかり小さい、花を描かれただけの鉄の塊だった。

「最初は誰しもそうだ」

父は慰めるように、わたしの頭に手を置くと、仕事場へと戻って行ってしまった。応援してくれていた母も、次は頑張ろうね、と苦笑するだけだった。
分かってる、この鍔は失敗したんだと。でも、もう少し見てくれてもいいんじゃないかと、結果だけでなく、過程を見てくれてもいいんじゃないかと、やるせない気持ちになった。
わたしは逃げるように、家を飛び出してしまった。背後から聞こえる、母の制止の声も無視して、ただがむしゃらに走った。
けれど、この頃のわたしは、心も体もまだまだ未熟だった。
まだ1分と走っていないのに、すぐに息が切れた。何も考えずにただ突っ走り、ついには、今自分がどこにいるかも分からず道に迷う始末。
父と母の名を呼びながら、わたしは惨めに涙を流しながら、人混みの中を歩いていた。
黄色い何かが、わたしの視界を横切った。それは、春の始め頃に咲くという、わたしの好きな、黄色いミモザの花だった。
何かに引き寄せられるように、わたしはミモザの木の方へと足を進めた。そのときには、先ほどまでの不安など忘れてしまっていた。

「ん?」

ミモザの木の根元には、既に誰かがいた。 ミモザと同じ髪色で、先端だけが赤みを帯びている人が。
その人はわたしを見るなり、怪しがるでもなく、どうした?と笑いかけてくれた。
話したこともない相手だったので、緊張して言葉が出ない。

「む、君はA少女か?」

A少女、と不思議な呼ばれ方だと思いはしたが、おそらくわたしのことだろうと、首を縦に振った。
やはりか!と彼はワハハと豪快に笑う。
随分とグイグイ来る人だなぁ、とわたしは数歩後ずさりした。

弐 変わった人→←零 亡き人へ



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squid(プロフ) - 愛羅さん» 返信が遅れてすみません!感動系は少々苦手なのですが、そのように思っていただけたなら幸いです!完読ありがとうございます! (7月1日 6時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
愛羅(プロフ) - 感動しました!涙が止まりません…( ; ; ) (7月1日 0時) (レス) id: 83407bc1eb (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - ぶるこ。さん» コメントありがとうございます!素敵な夢だなんてとんでもないです。完読していただきありがとうございます。 (6月17日 7時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
ぶるこ。 - 涙ぼろぼろです。素敵な夢をありがとうございます…。 (6月17日 2時) (レス) id: 48aba5c9ee (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - キノさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。 (6月14日 15時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:squid | 作成日時:2019年5月11日 17時

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