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壱ノ肆 赫灼と静寂 ページ12

笑い声が段々と小さくなり、錆兎の身体がゆらりと揺れる。

「それはそれは……心配していただけてありがたい事だ」

その笑い声の意味を、炭治郎は匂いで察した。
面白いから笑っている。だが、いったい何がそんなにも面白いのか。
炭治郎がたった一太刀で転んだから?半年が経っても、未だに岩を切れないから?
いいや、むしろそれで笑うなど無礼極まれり。

「お前は俺に……怪我をさせると思っているわけだ」

まだ剣術のケの字もできない炭治郎が、自分に怪我を負わせるかもしれないと思っていることに、錆兎は堪えきれずに笑ったのだ。
実際は、炭治郎の剣術の腕前はかなり上がっている。だがそれでも錆兎を相手にするには足りない。
炭治郎が弱いわけではない。錆兎が炭治郎よりも強かった、それだけだ。

「鈍い」

ほんの一瞬で炭治郎の間合いに入り込み、風を切る音と共に、木刀が彼の頭スレスレを横切る。あとほんの少し回避が遅れれば、軽い脳震盪を起こしてしまっていたかもしれない。

「弱い」

炭治郎が避けるも、休む間も与えずに足払いにかけられ、反応できずに転んでしまう。
体勢を崩した炭治郎だが、もちろんやられてばかりではない。錆兎が足払いから体勢を立て直すよりも先にと刀を構える。
手加減などして勝てる相手ではないから。

「未熟!」

だが、炭治郎が構えるよりも早く、錆兎は木刀を回転させて、持ち手で炭治郎の溝を打つ。
後ろによろめき咳き込む炭治郎に、錆兎は追撃をやめて、吐き捨てるように言い放つ。

「そんなものは男ではない」

立ってみせろ。お前に守るべきものがあるのなら。
覚悟を示してみろ。お前に為すべきことがあるのなら。
お前の力を見せてみろ。これから先、何があろうと曲がることのない、真っ直ぐな太刀を。
雄叫びを上げて、炭治郎は刀を振り下ろす。それを、錆兎は片足を軸にして回転し、刀に沿うように躱すと、その勢いのまま、木刀を炭治郎の顎へ突き上げる。
パァン、という音を最後に、山の中は元の静寂な空気に包まれた。

「あとは頼む。A」

影でひっそりと見守っていた幼馴染に、錆兎は木刀を腰に下げながら声をかける。
少しやり過ぎではないかと思いはしたが、男と男の語り合いに首を突っ込むべきではないだろうと、Aは黙って、時点に横たわる炭治郎の顎に、冷やした布を当てる。

「彼は"突破"できると思う?」
「そうなるように、俺"たち"が背中を押すんだ」

あとは炭治郎次第だと、錆兎は山の奥ほど姿を消した。

壱ノ伍 赫灼と青女→←壱ノ参 赫灼と木刀



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squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!こちらこそ、面白いストーリーを提供していただきありがとうございます。頑張ります! (2019年8月3日 17時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 続編頑張ってください!!お花見のストーリありがとうございます (2019年8月3日 17時) (レス) id: 35c1a3a4d0 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月2日 22時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
りんご - foooooo!!!))ついに来ましたね、続編!!更新頑張ってください (2019年8月2日 21時) (レス) id: 65b8d779c9 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!夏に合わせて海に行ったりとかを考えていたのですが、お花見も良いですね。参考にします、ありがとうございます! (2019年8月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:squid | 作成日時:2019年6月1日 20時

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