氷点下、君に会いたい ページ45
｢ッハァッはぁ……どこ…？｣
タクシーとか拾っておけばよかったな…
夢中で走って
自分の知らない所に来てしまった
そこは人気もなくて、シーンとしている
体温がどんどん下がって
指先の感覚もなくなってきた
まず、なんで人探しから始まるのよ…
そういう無駄なイベントいらなくない…？
そう怒っても周りには誰もいなくて
暗闇の中ただ歩くしかなかった
目に入ったのは、人気のない公園。
街灯がぽつんとついているだけで、真っ暗だった
寒い、寒いよ
薄着で外に飛び出した自分を恨んだ
0時まで
どこにいるか分からない相手を探すなんて
そんなの無理だよ…
もしかしたら普通に会社の中だったかもしれないし
いや、それだったら辛すぎる
なんのために走ったの私！
薄着の私にソウルの冬は寒すぎて
何かを考えていないと気を失いそうで
公園のど真ん中でうずくまる
今運ばれたらたくさんの人に迷惑かけちゃう…
でも、年末の音楽番組出れなかったら嫌だなぁ
もうダメかも
私、もしかしたらこのまま死ぬのかな
誕生日もあと少しだったのに
あぁ、意識が遠のいてく
辺りがだんだん白く霞んでいって
瞼が完全に閉じようとした時
頭に、暖かい大きな手
ぎゅっと、黒いコートに体を引き寄せられて
徐々に体温が戻っていくような気がした
｢A｣
そこにいたのは
今まさに探していた人で
｢唇真っ青じゃん、早く帰ろう｣
わたし、あなたを探しに来たんだよ
気付いてないのかな
帰ろうとする身体を
ありったけの力で引き寄せて
唇を重ねるの
驚いたように細い目を見開くあなたに
微笑んで
｢私、ジェノのことが好き｣
それだけ言って
身体を包み込む暖かさに安心して瞳を閉じる
落ちていく意識の中で
もう一度、頬に温かいものが触れたのを感じた
｢まさか、寝たの…？A｣
彼がそんなことを言っているとも知らずに。
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作者名：ぽこ | 作成日時：2020年7月19日 19時
