59 . 症状と再会と ページ10
慧side
病室に着くと、まだ2人とも夢の中だった。
眼帯をつけられた大ちゃんと、だいぶ顔色が良くなった涼介。
ピタッ…涼介のおでこを触ってみると、もう平熱に戻っていた。
慧「涼介、分かるか?」
涼介「…んぅ…」
瞼がゆっくりと開き、口角が上がるのがわかった。
涼介「…けいに、ありがと…」
この時はまだ、何に対してのありがとうなのか
全くと言っていいほど見当もつかなかった。
薮「朝の通院ぶりだね。まさか運ばれてくるなんて…驚いたよ。」
涼介「やや…や、ややぶせんせ…」
忘れかけていた。涼介の、吃音のこと。
俺の前では普通に話せるようになったからといって、涼介の吃音症が治ったわけではない。
涼介はいつも、自分と戦っていたんだ。
「あのー、俺もいるんですけどー。」
体を倒したままの大ちゃんが、少し声を張って呟いた。
慧「ごめんごめん。あ、そうそう大ちゃん、薮!覚えてる?」
薮「ちょっと、慧」
大「あぁ!こうた先生、ですよね?ご無沙汰してます」
薮「久しぶり…有岡くん。」
大貴「有岡くんだなんて。堅苦しくないですか、
…昔みたいに、大貴って。呼んでくださいよ。」
ほら。大ちゃんは人を嫌うような子じゃないよ。
大ちゃんの家で、何があったのか。
皮肉にも、本人たちの口から聞き出すこととなった。
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作者名:朔 | 作成日時:2020年2月1日 23時