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Aside
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「それでなぁ?そこで俺がなぁ?」
初めて彼と来た居酒屋。個室に通され良い雰囲気だと思いながらゆっくりとお酒を楽しんでいたのだが、この人はゆっくりというものが辞書に無いらしく開始早々この有様。
「はいはい、何回目ですかそれ」
「3回目〜」
覚えてるのかよ!と思わずツッコミそうになったけど一応この人歳上なんだから黙っておこうと口を紡ぐ。
「Aちゃん」
「なんですか?」
突然呼ばれて机の上のおつまみに向けられていた視線を彼に移すと甘ったるい視線が私に向けられていた。
「センラとさ、付き合ってくれへん?」
心臓が飛び出るかと思った。
「────は!!??」
「ダメ?」
彼の甘ったるい言葉にぐらりと揺れる。ダメです。そう言わなきゃ行けないのに。騙したい。このまま。
「───っ、」
やっぱり、そんなのダメ。彼に嘘はつきたくない。
「……ダメ、です」
必死にそんな言葉を零すと彼はそっか、と目を細めて悲しそうに笑った。そして、机の上でいつの間にか重ねられた指先の熱が離れていく。
「私───!!」
離れていきそうなその手を再び掴んでしまった。
「ホントは、スタッフなんかじゃないんです……あの時、もしかしてセンラさんに会えるかもしれないって思ってライブ会場の裏にいて!それで!だから!ダメなんです!───私っ……!センラさんのこと騙してた!」
声は涙で濡れてて、紡がれる言葉も意味わかんなくて。なのに、彼は私の手を振りほどいてくれなかった。彼の優しい瞳は私の都合の良い幻覚?
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