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第5話 誇る ページ6

ボロボロと涙が溢れる。

あぁ、こんな、人じゃない身になっても涙は出るのか。


あぁ、早くどこかへ行ってくれ。消えてくれ、私はいつまでこの衝動を抑えられるか分からないんだ。そして、できれば、お父さんを


「…あんた、松屋んとこのAちゃんだったのかい…そんな必死な顔だから、わかんなかったよ」
『…ぇ』
「松屋の旦那の遺体は俺が運ぶよ…運ぶから、その衝動が抑えられないなら三里先の山奥に身を隠しな、あそこは人が来ないから、松屋には上手く伝えるよ…」


そう言っておじさんはお父さんの体を肩に担いでにっこりと笑った。


頭がすっきりする、綺麗に、透き通る。


あったはずの殺意と異常な飢餓が消える


「そんな、わけのわからない状態で、殺したい衝動が湧いてるらしい感情で、それでも殺そうとしない…相変わらず松屋はいい子を育てるのが上手い。」
『…おと、さんは…』
「わかってるよ、行きなさい。松屋を人殺しの親にしちゃいけないよ。この人は誰よりも気高くて、優しい人なんだから」


そう言い残して、おじさんは人の少ない大通りに消えていく。


お父さんは、優しい人だ。


だから、誰よりも人望があって、奉公人である私たちに対する評価すら高い、そんな、そんな


『貴方は、自慢の…お父さんでした…!』


そう言って頭を下げて、ゆっくり立ち上がる。

今しかない、人のいない今、この時間におじさんの言っていた山に行かなくては











気付いたら、その山に着いていた。

本当にその山には人がいなくて、山に向かう道中にさえ人が殆どいなかった。


ただ、少し不可解だったのが私自身だ。

嫌に夜目が効いて、耳も普段のそれと比べられないほど聞こえる。


『小屋…だ』


人の気配がしない小屋がある。

生活感もないから、誰かが住んでいて今は丁度留守、というわけでもなさそうだ。


申し訳ないがお借りしよう。今はただ、すごく眠い。


木々や窓に遮られて日の入らないところのようだが贅沢は言えまい。


眠ろう、叶うならば、この全てが夢でありますように。


ずっと遠くにあるはずの街のざわめきや賑わいが、遠くに聞こえた。

第6話 現実→←第4話 飢餓



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いーさん(プロフ) - 満月雪兎さん» すみません、返信遅くなりました。ありがとうございます!頑張りますね! (2019年8月20日 19時) (レス) id: 4740787582 (このIDを非表示/違反報告)
満月雪兎(プロフ) - 『父を殺した者への復讐を誓う』というところが滝夜叉姫っぽくて好きです。更新頑張ってください! (2019年8月11日 12時) (レス) id: 5acf868e91 (このIDを非表示/違反報告)
いーさん(プロフ) - レイラさん» ありがとうございます!頑張らせていただきますね! (2019年8月8日 21時) (レス) id: 4740787582 (このIDを非表示/違反報告)
いーさん(プロフ) - 甘空さん» コメントありがとうございます!そう言って貰えるととても嬉しいです!応援に応えられるよう頑張りますね!いえいえ!本当にありがとうございます! (2019年8月8日 21時) (レス) id: 4740787582 (このIDを非表示/違反報告)
レイラ(プロフ) - 面白かったです。涙腺が崩壊しました。応援しています。頑張ってください。 (2019年8月8日 5時) (レス) id: 16a7c15423 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いーさん | 作成日時:2019年6月4日 23時

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