228話:届かない想い ページ5
ー土蜘蛛sideー
Aが泣き疲れて眠った。
部屋を後にしようと襖を開けると、
入口に大ガマが立っていた。
大ガマ「酷いもんだよな……。」
土蜘蛛「…そうだな。」
大ガマ「Aは知らねぇから、仕方ないんだけどな。」
土蜘蛛「……昔ならば、吾輩にしておけと言えたかもしれぬ。だが、今となってはそんな事は……。」
大ガマ「言ったところで、お前もAも救われねぇよ…。
ズルいよな……俺達がAと最初に出会って、過ごす時間も長かったってのによ。」
土蜘蛛「……死んでもなお、想い人の心を持っていける程ズルいことは無いな…。」
大ガマ「Aが死んだ時、若君の心を持っていった。そうして、生まれ変わったAもまた、消えた若君の心を奪ったままだ。
俺達が入る隙なんて、最初からなかったのかもな。」
土蜘蛛「目の前に愛おしいと思う女がいるのに、その女は別の男を想って泣いておる……、吾輩の気持ちも知らずにな。」
大ガマ「苦しいな……土蜘蛛さんよぉ…。」
土蜘蛛「お主も、我慢はせん方が良いぞ。」
震える大ガマの肩に、吾輩は手を置いた。
大ガマ「こんなに……好きなのによぉ……!」
大ガマの涙まじりの声が
廊下に響いて静かに消えていった。
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作者名:暁兔 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年8月25日 14時