203話:危険は承知の上 ページ25
ー烏天狗sideー
この子を、カルラに会わせるわけにはいかない。
きっとカルラは覚えている。
僕がAを好いていると言った時、
しっかりと顔を確かめていたから。
このAにそっくりな、いや
もうAそのものの様なこの子を
カルラの前に出してしまうと、きっと僕もこの子も助からない。
妖怪の見える人間は貴重だ。
カルラが何をするかなんて目に見えている。
それにきっと、僕はまだカルラに恨まれている。
早くこの子をこの山から引き離さないと、
気配で気付かれる可能性もある。
烏天狗「ねぇ君、早くこの山を降りた方がいい。」
貴方「それは出来ないわ。何としてでもカルラに会わなきゃいけないの。」
烏天狗「聞き分けてよ!それは出来ないって言ってるでしょ!」
貴方「それでも、妖魔界を救うためなら危険を承知でも行かなくちゃいけないの。」
烏天狗「君は人間でしょう!?妖魔界なんて君には関係がないじゃないか!カルラのところに行けば、君の命の保証なんかないんだよ!?」
行くな。行くな。
引き返すって言ってよ。
どうしてもその容姿で思い出してしまう。
僕の前で、僕を庇って血を飲んでしまったあの子を。
傷つくところなんて、もう見たくない。
それが例え、あの子じゃなくても。
そっくりだから、こんなに追い返したくなるのかな。
別の顔の人間なら、きっと僕は素直にカルラの所へ案内していたんだと思う。
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作者名:暁兔 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年7月14日 0時