No.49 ページ5
*
「Aちゃん…」
胸が締め付けられる。言葉を上手く紡ぐことが出来ない。
紡ぐことが出来ない?可笑しな話だ。
普段なら、女性を慰める為の言葉の一つや二つ簡単に出てくるだろうに。
矢張り、彼女は私にとって"特別"だからだろうか。
『__Aは、倖せになるべきだ。こんな血腥い所でじゃない。もっと……明るくて、平和な世界で。』
莫迦だなぁ、織田作。君が彼女を悲しませてどうするのさ。
彼女の悲しみが消えることは無い。其の傷が完全に癒えることも。
それでも、痛みを和らげることは出来る。
そして其れは、同じ業を背負った私の役目だ。
「ねェ、Aちゃん。」
彼女の両肩に手を置く。彼女が壊れてしまわないように、そっと。彼女は顔を上げて私を見た。そう、それでいい。今は私を見て。他のことは考えないで。
「私、Aちゃんの作った咖哩、食べたいな。」
彼女は少し驚いたような顔をした後、また直ぐに目を伏せてしまった。
「でも…」
「そもそも、咖哩なんてもっと気軽に食べていい料理の筈でしょう?毎日食べてるような国だってあるくらいなんだから。」
「……。」
「食べたい時に好きなだけ食べればいい。例え其れが__誰かの命日じゃなくても。」
「…!」
一年に一度の其の日だけ、泣きながら作って、泣きながら食べるなんて、そんなの悲しいじゃないか。
「未完成だって云うのなら、一緒に完成させよう__これからは、私の為に作っておくれよ。」
「太宰さん…」
数秒の沈黙。
彼女は数回目を瞬かせた後_
「……ふっ、あはははは!」
堰を切ったように笑い出した。
「え、Aちゃん??」
「ふふっ…!御免なさい。だって、だって!」
云いながら息を整えるAちゃん。
私は唯、彼女が落ち着くのを待つことしか出来ない。
「だって、あの太宰さんが、真剣な顔して、可笑しなことを云うものだから!」
「そんなに可笑しかった?」
「可笑しいですよ。だって、プロポーズみたいじゃないですか。」
全く。私は彼女の為を思って、珍しく真剣に言葉を選んで話したというのに。
まァ。彼女が笑ってくれているのなら、何だっていいか。
「私はそのつもりで云ったのだよ?」
「御冗談を。」
「どうかな。」
「もう…」
彼女はまたクスクスと笑った。
今度は私も笑った。
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マニ。(プロフ) - 猫ノ栞さん» ✉️。はい!ボードの方で仲良くしましょうね!宜しくお願い致します💖 (12月5日 19時) (レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
猫ノ栞(プロフ) - マニ。さん» よかったです!これからよろしくお願いします🌸 (12月5日 19時) (レス) id: 218254b255 (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - 猫ノ栞さん» ✉️。平気です!ちゃん届いてますし、空欄ではないので大丈夫です!💖 (12月5日 19時) (レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
猫ノ栞(プロフ) - マニ。さん» 再度送って見ました!届いてますでしょうか? (12月5日 19時) (レス) id: 218254b255 (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - 猫ノ栞さん» ✉️。おけです!ボードの返事お待ちしています。猫ノ栞さん!☺️ (12月5日 19時) (レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:猫ノ栞 | 作成日時:2018年12月30日 16時