陸拾参 ページ16
不死川side
俺は、家族を殺されてからは、ずっと1人で生きてきた。
勿論、師範等身近にいる人はいたが、誰にも寄り添うこともなく、実の弟さえも突き放して生きてきた。
勿論苦しかった。
いつまで経っても家族を失った事に対する悲しみは消えなかった。
止まってしまいたかった。
助けて、と言いたかった。
だが、俺はお兄ちゃんだ。
アイツらが死んでも、俺から突き放したとしても、おれはアイツらのお兄ちゃんだ。
情けない所、弱った背中は見せられない。
俺はその思いで死に物狂いでやってきた結果、柱となった。
そして柱となって少したった時、哀透に会った。
時透に次ぐ2番目に幼い柱。しかも女で。
最初に聞いただけで興味があった。
そして会う時は、鬼に親を殺されでもしたんだろう少女を少し憐みを混ぜた慈悲深い目で見てやろうと決めた。
普段はあまりそういう事はしないが、相手は少女。それ位いいだろう。
だが、哀透に会った時、俺の考えは根本から覆された。
哀透の境遇は俺の想像よりも遥かに酷いものであったのだ。
人よりも多くの色んな境遇の奴らを見てきた俺たち柱が
眉を寄せ、
拳を握りしめる位に。
俺は、最初、ほんの少しだけ甘やかそうと思っていた。
いくら子供とはいえ辛いのは皆一緒だし、お前より幼い時透もいる。
だが、今は、
哀透に甘えて欲しい。
甘やかしてやりたい。
笑って欲しい。
ここでは無理だとはわかっていても、少しでも普通の女の子のように、なって欲しい。
別に作法とかそういうのはどうでもいい。
ただ、髪飾りに胸躍らせ、
着物に目を輝かせ、
意中の男に胸ときめかせるような、
そういう女の子に。
柄にもなく俺は、自分より幼い同期の未来が輝かしい事を目をひそめながら胸の中でこっそりと願ってしまうのだ。
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ハルル - とっても面白いですね。続き楽しみにしています! (2021年4月2日 16時) (レス) id: 3ed8831ca6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蔚 | 作成日時:2020年1月13日 21時