佐野さんに色々してみたいしされてみたい【あなたの番です】 (ページ10)

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バイト先に来られたページ10

「いらっしゃいませ」

と声を掛けたのは、豪さんだった。
……え？何故ここに？
カフェでバイトしているとは言っていたけど、まさか来るとは……

「カウンター席へどうぞ」

今は業務中だ、業務中。
不必要な私情を挟むな、混ぜるな。
急いでカウンターへ向かい、注文をとる。

「ご注文は……」
「ブラック……アイスで」
「アイスコーヒー、ブラックですね。畏まりました」

コーヒーマシンをセットして、いつも通りに淹れる。
凄くこっち見てくる……
どうしよう。
バレてるよね、絶対。
バレたくなかったのに……

「あの、すみませーん」
「今お伺いします」

客Aさんありがとう。
なんか気まずいから助かった。

「チーズケーキ2つください」
「はい。チーズケーキ2つですね。少々お待ちください」

再度カウンターへ戻り、マスターに声を掛ける。

「チーズケーキ2つお願いします」
「わかった。切るだけだから待ってて」
「コーヒーをお待ちしているお客様がいらっしゃるので、先にこちらを優先しますね」
「うん。十六夜ちゃんの好きにやって」

急いでコーヒーを淹れ、豪さんにお渡しする。
ああ、もう、どうしよう。

「お待たせしました、ブラックコーヒーです」
「十六夜ちゃーん、チーズケーキ」
「あ、はい！」

そしてチーズケーキを別のお客様にお渡しする。
なるべくカウンターには立ちたくないんだけどなあ……
なんでわかったんだろう。
言ってもないのに……本山幹子さんにも。

「お待たせしました、チーズケーキ2つです」
「わ～、美味しそう！」

カウンターの方をチラリ、と見る。
マスターと豪さんが話していた。
……豪さんは人が苦手なのに。

「何話してたんですか？あたしに内緒で」
「十六夜ちゃんには言えないことかなぁ」
「……そうですか。それなら良いです」

言えないこと、なら首を突っ込む必要はない。
バイトを続け、ようやく終わった。