六等星 5

追われる者 ページ5

それからすぐ、私はエドの元へ電話をかけた。この前、一応番号を聞いておいたことが幸いとなった。まさかこんなに早く自分からかけることになるとは思ってなかったが。

しかし、呼び出し音がしばらく鳴ってやっと繋がったのは、

『こちら留守番電話サービスです。発信音の後に…』

どうやら………今日はとことんついてないようだ。

とりあえず、折り返し連絡するようにメッセージをいれて、携帯を机に放り投げる。

出鼻を挫かれたんじゃこの先も頼れそうにないだろう。別の策を練るか。

とりあえず噂の“高貴なマフィア”について何か掴めないかとネットサーフィンをしていると、ふと、ある記事が目に入ってきた。

それはコミュニティが始めた条件競売についてだった。小見出しによると『写真の男女を捕まえたら一人頭20億ジェニー支払われる。(ただし条件競売への参加費用として500万必要)』とのこと。

こういう美味しそうな話を悪党が見逃すわけにはいかない。どれどれ、ちょっと拝見。
犯罪の匂いに誘き寄せられて記事を開いて、画面をスクロールすると、意外にもその記事に添付されていたターゲットの男女8名、全員見知った顔の奴だった。ていうかさっきまで一緒にいたし、何なら私自身も入ってる。
ふむふむ、なるほど。隠し撮りとは流石ヤクザだ。趣味が悪い。偶然だろうけど、私はたまたまフェイタンをからかってめちゃめちゃ笑ってたところを撮られている。カメラマンに感謝だ。この写真が撮られた数秒後に私は痛い思いをするわけだが。
しかし、相手側も思ったより動くのが早かったな。やはりあらかじめ何かが起こると思っていたのは間違いないようだ。
その情報を誰がどうやって手に入れて流してたのかわかるまで、私達の周りで怪しい行動をする奴はほっとくわけにはいかないな。またこんな面倒なことになるのは御免だし。

けれど、お尋ね者になったからといって守りに入ってはいけない。こんな世界でやっていくにはいつだって、自分は『追う者』である自覚がいるわけで、『追われる者』であることに気付く余裕はいらない。

それに、この条件競売の本当の目的は、つまるところ馬鹿共から集める参加費用500万ってところだろう。金目的の一矢報い野郎が、陰獣全滅させてまんまとマフィアのお宝盗んだ狂人集団に敵うわけないってこと、ちょっと頭の良い十老頭なら考えればわかるはずだ。“十老人”なら別だが。

ぐっ、と伸びで気持ちを切り替えて、私は記事を閉じた。

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