あの日 ページ19
シャルナーク「初めて一緒に花火を見た日のこと、覚えてる?」
そしてまた街の方に視線を戻して話を、始めた。
「うん、覚えてる。エドと三人で花火を作ったんだ」
シャルナーク「そう。それで崩れかけの建物の上から、見事無事に打ち上がった花火に喜ぶエドを見ながらA、笑ったんだ。『楽しいね』って」
シャルは本当に、なんでも覚えてるなぁ。
「そうだったっけな。随分前のことなのに、よく覚えてるね」
あれは私達がりんご3個分くらいの大きさだった時の話ではないだろうか。
何でそんなに昔のことも、鮮明に、風景を覚えているかのように思い出せるんだろう。彼にとっては小さなことも大事なことなのかな。
それとも大きさなんてないのかな。
尊敬の思いを胸にしながら、彼の横顔を盗み見る。見とれる暇もなく、彼は意外な言葉を口にした。
シャルナーク「ううん、忘れられないだけ」
キラキラとエメラルドのような目に街の光が映る。
「呪縛的な?」
私が空気を壊すような返しをしても、彼はきっと笑うだろう。笑って受け入れる。
シャルナーク「ははっ、何でそうなるんだよ。…でもまぁ、ある意味そうかもね。だから俺にとっては、“今”も一生の永さなんだよ」
そっか。『一生』忘れないのか。強いようで、それは苦しいのかもしれないな。
わかってあげたいな。その気持ち。すごく。
「シャル、苦しい時は言って。辛い時、泣きたい時、嬉しい時、楽しい時も。私に教えてね」
膝の上で、拳を握った。ワンピースとサンダルの私では彼を守れないかもしれないけど、きっと。
命をかけるなら、彼に。
何度も決めた覚悟をやはりまた再確認していると、彼はまた私の顔を不思議そうに覗きこんだ。…その角度やめろ、心臓に悪い。
シャルナーク「苦しい?A、何か勘違いしてないか?俺、都合の悪いことは忘れるよ」
「え、でもさっき“一生”忘れないって」
シャルナーク「それは……まぁ、言わなきゃ伝わんないよな。ごめん。俺多分あの時、Aが『楽しい』って笑った瞬間から、何て言うか…うまく言えないけど、人生が楽しくなったんだ。一生の思い出って意味。今日もね」
「シャルってば、大袈裟だなぁ」
また私に笑いかけてくれた彼の笑顔と言葉に、形容しがたい重みを感じてわざと照れ隠しするように笑って流そうとした。
けれど彼は流すつもりなんて、全然ないよという風に真っ直ぐにこっちを見る。その視線に胸がぐっと苦しくなるような気がした。
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ナツメ(プロフ) - 緑那さん» 緑那さんはじめまして、作者のナツメです〜〜\(^_^)/私も緑那さんのコメントを読みながらどきどきしちゃいました…!!めっちゃ励みになるし超嬉しいです〜〜(;_;)本当にありがとうございます!これからも頑張るのでぜひ読んでいただければなと思います! (2019年6月25日 20時) (レス) id: 11619fb97c (このIDを非表示/違反報告)
緑那(プロフ) - はじめましてコメント失礼します……!興奮しすぎてまとまってない感想を殴り書きしたら普通に文字数オーバーだったのですごく簡単になってしまうのですが、読んでるあいだずっとどきどきしてました。自分でもびっくりです読んでてめっちゃわくわくしました……!! (2019年6月25日 17時) (レス) id: 3c1948d3a1 (このIDを非表示/違反報告)
ナツメ(プロフ) - すーさん» わー!!ありがとうございます!頑張ります\(^_^)/ (2019年6月14日 6時) (レス) id: 11619fb97c (このIDを非表示/違反報告)
すー(プロフ) - 続き待ってます! (2019年6月9日 13時) (レス) id: 53cfd44f92 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナツメ | 作成日時:2019年5月25日 23時