二人の幸せ者 ページ41
それからエドは一呼吸置いて、私の目をしっかり見てからこう言った。
エド「私の除念はちと特殊でな。強力な念を取り除く場合は、それと同様の犠牲が必要となる。そして失うのはお前だ、A。」
それはつまり、タダでは済まないということだった。一緒に話を聞いていたクロロは心配するみたいに横目で私を伺った。
クロロ「犠牲とは具体的に、どういったことなんだ?」
エド「具体的なことは私にもよくわからん。ただ経験上、今回の犠牲は重いものになるだろう。
念がかけられていた期間がまず長い。おまけに取り除く念が厄介なものだからな。……まぁA自身の精神的な強さにもよると思うが、今まで通りの生活するのは無理だろうな」
クロロ「……そうか」
二人とも、表情が重たいなぁ。私はこんなに元気なのに!
「やってよ、除念。」
きっと二人は望んでいた。けれどこの場ではあまりにも軽すぎる。
そんな私の一言が地下室に小さく響いた。
「ここで退いたら駄目な気がするんだよね、なんとなく、多分だけど。ね、クロロ。いいでしょ?」
私だけの私ではないことは重々承知。私のこの決断でこれから、クロロには一番お世話になるだろうし、迷惑かけることもわかってる。それでも、やりたい。念能力にこだわるつもりはないけど、強くなりたい。そしていつまでも強く有りたいんだ。守りたい人達がいるから。
声に出さなくてもこれは伝わると思う。私達は似た者同士だし。
クロロはしばらく考えるように黙りこんで、もう一度私の目をしっかり見た。そしてこう言った。
クロロ「それがお前の決断なら、俺はそれに従う」
ほら、やっぱりだ。彼はわかってくれている。私とクロロは、同じだ。
「ありがとう」
私を取り囲む境遇。周りの人達。そしてその言葉に、幸せを感じて笑みが溢れた。
クロロ「俺の方こそ、ありがとう。A。」
彼も私につられて笑った。子供の頃から変わらない、ふにゃりとした頼りない笑顔。頼りないから団長なんて、とても呼べない。
「私って幸せだなぁ」
その言葉は、嘘でも、計算でも、自分に言い聞かせるためのものでもない。ただふいに出てしまった、とりとめもない、後にも残らない、私の呟き。
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作者名:ナツメ | 作成日時:2018年11月19日 18時