絶望の黒 ページ37
『僕は……パイロットになるためにお金を貯めてるんだ、それだけ』
忙しなく機械を動かして、Aから様々なデータを読み取っているエドの背中を見つめながらソラは言う。その表情も口調も、夢を語る人間のものではない。脱力しきっている。
こんな顔の奴をたくさん見てきた。そしてきっと、かつての俺もこうだった。
クロロ「…そうか」
やはり世界は、何も変わっていない。
『それより、あの女は一体何なの？』
彼は間髪入れずにそう質問する。意外と前のめりの姿勢だ。さっきからAを気にしてるとは思ってたが……まぁ確かにあいつは興味を惹くよな、何故か。
クロロ「あぁ、Aか。あいつは…見たまんまのやつだよ。でも子供好きだから気を付けろ」
警戒したのか、ソラはすかさず眉をしかめる。
『それは…ヤバイ意味で？』
違うと信じたいが………いや、どうなんだろう。
クロロ「半々…といったところだな」
ていうかそうだと信じたい。
＊＊
エド「出たぞ！思った通りだ！！！」
10分ほどたって、エドの大きな声が地下室に響いた。
クロロ「本当か」
ソラの隣から離れて、エドが操っているモニターの傍に立つ。
エド「これを見ろ」
言われた通りモニターを覗きこむと、そこに映し出されたAの腹部には剣のような形の影がくっきり、絶望のような黒で…表示されていた。
クロロ「やっぱり、か」
勘の良い者なら、彼女に近付けばわかるはずだ。腹部に感じる強いオーラ。ギリギリ体外には出ていないが、圧力を感じるのは確かだ。
きっとこの剣が、Aの念能力を抑えている正体。だが、どうやって？
念能力の無効化か…………そんなのありかよ…ふざけんな、チートすぎんだろ…
だが、仮にそうであるとするとつまるところ特質と具現化の合わせ技ってところか。操作系って可能性もなくはないが、もしそうだとしたら実物の剣が体内に突き刺さっていることになるから、いくら馬鹿でも流石に気付くだろう。やはり操作系の線は薄いな。
しかし念能力の無効化というチート技も、制約と誓約があるからには有り得ない話でもない。だとすれば、この念能力の持ち主はかなり重い誓約を背負っているだろう。そこまでして、Aの念能力を抑えるメリットって何だ？ていうかそもそもいつ誰が………
エド「…まぁ、ひとまず座って考えた方がええな。ソラ、猛獣に毛布かけとけ。夜になると冷える」
ソラ「はい」
クロロ「あぁ………ありがとう」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ナツメ | 作成日時：2018年11月19日 18時
