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帰り道を、落ち込みながらとぼとぼと歩く。
テンさんは3歩先を楽しそうに。
午前中の住宅街はとっても静かで、テンさんは小さな音で音楽をかけながら鼻歌を歌ってる。
「久しぶりにお昼より前におきた」
「そうですか…遅寝遅起きなんですね…」
「あ、ねこ」
私が落ち込みながらも一生懸命返事をしたのに、
そんなの気にも止めず駐車場の隅っこで丸くなっている猫にゆっくりと駆け寄るテンさん。
言葉がおかしいけれど、本当にゆっくり駆け寄ったの。こう、なんて言ったらいいかな。
「おまえ、まんまるだねえ」
「にゃー」
「ごはんは弟妹たちにもわけてあげなよ、わかった？」
「にゃー」
「じゃあね」
テンさんが立ち上がったら、猫は彼の足元にすりすりとからだを擦り付けた。
「あ、おまえ、だめだよそんな簡単に知らない人に甘えたら」
「にゃー」
「にゃーじゃないよ。連れていかれちゃうよ…あ、連れて帰ってほしいの？うーん、おれもうちに来てほしいけどね、おれすっごく不規則な生活してるんだよね、だからきっと寂しいと思う」
「にゃー」
「あと、おれがおまえを連れて帰ったら誰が弟たちのご飯持ってくるのってなっちゃうでしょ」
なんだか猫に話しかけるには長いなあ、人間語が。
でもテンさん猫みたいだから、意外と通じてるのかも。きまぐれなところとか目つきとか、猫っぽい。
「だからばいばい。また会おうね」
テンさんがその場を離れると、その猫は少しだけこちらを見つめてからどこかに消えて行った。
…この猫とテンさんも、多分もう会わないんだろうな。
なんだか、黙っていたら昨日まで知らなかった人ってことを忘れてしまうし、懐かしい感じがする。
何でだろうって今日の朝からずっと考えているけど答えなんて出そうになくて、もう考えるのをやめた。
また私のちょっと先を歩き出したテンさんに一定の距離をとりながら着いて行って、わたしはまたあのタワーマンションに戻ってきた。
今さらになって部屋のどこにいたらいいか分からなくて、部屋の隅に立ったままテンさんに声をかける。
「あの、朝ごはんまでご馳走して下さってありがとうございました」
「いーえ。おれがほとんど食べちゃったけどね」
「今11時なので…お昼には出ます。このパーカーはクリーニングして、お忙しいと思うのでクンさんに預けます」
「…」
もう、二度と会わない。
私はこっそり、心に誓ってる。
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くま(プロフ) - ハリさんの書かれるテンさん、とっても魅力的で本当に好きです！！素敵なお話読ませていただけて幸せです！ (2022年1月29日 12時) (
レス) @page50 id: 3a63272b29 (このIDを非表示/違反報告)
ハリ(プロフ) - リュイさん» コメントありがとうございます！長らくお待たせして本当にすみません。活動をやめた訳ではなくて、今は試行錯誤を重ねている段階なので、いいお話が出来たらそのとき皆様にお見せしたいと思っています！ので、もうすこしお待ちくださいね！いつもありがとうございます！ (2021年12月28日 3時) (レス) id: 86d42c940d (このIDを非表示/違反報告)
リュイ - ハリ様、もう活動はしないのでしょうか… (2021年12月24日 16時) (レス) @page50 id: 2183f1b6e8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 初コメお邪魔します(^^)このお話大好きでした！テンくんが大好きなのですが…読むと一時的に私にクン哥期がやって来たりも(*^^*)お話の中で最終的にテンくんと直感的に通じ合える存在になれて、とても幸せでした(*^o^*)またいつか新作が読める日を待っています！ (2021年8月15日 15時) (レス) id: 14837b160d (このIDを非表示/違反報告)
Kiki(プロフ) - 完結おめでとうございます好きです〜(;_;)(;_;)(;_;)また楽しみがひとつ減ってしまう、、かなしい、、、 (2021年8月14日 9時) (レス) id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハリ
| 作成日時：2021年1月18日 22時
