12 ページ12
.
今着てるパーカーは大きいから太もももギリギリ隠れるけど、渡されたのはそれよりも短い。
もう、ダサいとか言ってられない。
渡された服の下に昨日着ていたスーツのパンツを合わせて急いで部屋を飛び出すと、テンさんはノー！と叫んだ。
「モモありえない！」
「仕方ないでしょ！じゃあ下は下着で行きましょうか！変な趣味疑われて捕まるのはテンさんですよ！」
「そんなのモモもおまわりさんに連れてかれるよ」
もーモモはテンなしじゃ生きていけないの？とかなんとか言って、細身のジャージを勢いよく投げつける。
「はい！あと20秒したらもう出るから！はやく着替えてきて！」
もう一度寝室に閉じ込められたわたしは死に物狂いで着替え直して、テンさんと一緒に家を出た。
外に出るとさっきより太陽の位置が高くなっていて、人の量もすごく増えている。
無言でテンさんの後ろを着いていくと、テンさんは
純喫茶みたいな、レトロな雰囲気のカフェの前で立ち止まった。
からんころんと鳴るドアを開けて、店員さんが声をかける前に一番端の窓際のソファ席に迷わず座る。
メニューを持ってきたのは、1人の男性だった。
「お、テン。起きれたんだ」
「起きれたっていうか、起こされたっていうか、ねーモモ」
「は、はあ…」
「あ、クン、おれ今日ホットケーキ食べたくて来た」
「ああはいはい」
なんなんだ、この店員さんから溢れ出る母性は。
とってもかっこいいのに、優しい目尻が印象的。
ふわふわの茶髪で、見た目だけで良い人なのが分かる。
「その前にこちらは？」
「あ、モモと申します」
「モモさん、よろしくね」
か、かっこいい…。
私、ああいう人と結婚したい。
絶対無条件に優しそうな人。
私が頑張って稼ぐから、おうちで主夫してほしい。
クンさんの声で「起きて」「いってらっしゃい」「おかえり」が脳内再生される。
テンさんが人の脳内を覗ける人だったら、私今ここで服脱がされて外に放り出されそう。
クンさんが去ってから初対面の彼との未来を想像して一人で勝手に幸せになっていたら、
目の前のテンさんが「何考えてんの」とちょっと低めの声でわたしに問いかけた。
「クンさん、すごく素敵な方ですね」
「…」
「結婚相手にしたくなるような感じ」
「何言っちゃってんの？クンー、モモがね〜、」
「ばか！！」
「あ、今ばかって言った！」
「だって！」
「元気だね、はいお待たせ」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1655人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くま(プロフ) - ハリさんの書かれるテンさん、とっても魅力的で本当に好きです！！素敵なお話読ませていただけて幸せです！ (2022年1月29日 12時) (
レス) @page50 id: 3a63272b29 (このIDを非表示/違反報告)
ハリ(プロフ) - リュイさん» コメントありがとうございます！長らくお待たせして本当にすみません。活動をやめた訳ではなくて、今は試行錯誤を重ねている段階なので、いいお話が出来たらそのとき皆様にお見せしたいと思っています！ので、もうすこしお待ちくださいね！いつもありがとうございます！ (2021年12月28日 3時) (レス) id: 86d42c940d (このIDを非表示/違反報告)
リュイ - ハリ様、もう活動はしないのでしょうか… (2021年12月24日 16時) (レス) @page50 id: 2183f1b6e8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 初コメお邪魔します(^^)このお話大好きでした！テンくんが大好きなのですが…読むと一時的に私にクン哥期がやって来たりも(*^^*)お話の中で最終的にテンくんと直感的に通じ合える存在になれて、とても幸せでした(*^o^*)またいつか新作が読める日を待っています！ (2021年8月15日 15時) (レス) id: 14837b160d (このIDを非表示/違反報告)
Kiki(プロフ) - 完結おめでとうございます好きです〜(;_;)(;_;)(;_;)また楽しみがひとつ減ってしまう、、かなしい、、、 (2021年8月14日 9時) (レス) id: 8611e65663 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハリ
| 作成日時：2021年1月18日 22時
