昔の仲間 ページ6
「ちょっと貸して」
「オッケー!」
返事するからと手のひらを見せれば、さっきまでの携帯の奪い合いが嘘のようにすんなり貸してくれた一成。
あ、そこは貸してくれるんだ……こっそりフォルダ内の写真全部消しとこ。
「ほい」
「なんて書いたんですか?」
手早く打って返すと同時に、咲夜を含む数人が一成の手に戻された画面を覗き込む。
【初めまして。助監督の速水です。前回の春組同様、夏組公演も監督役者一同全力で頑張りますのでぜひ来て下さいね。劇場でお待ちしております(テンプレ顔文字)】
この通り、俺が書いたのはいかにもありきたりで当たり障りのない文章。
にしたつもりだったんだけど、咲也達には意外だったみたいで、
「うわ、丁寧な対応……」
「流石!って感じですね!」
「何この手馴れてる感キモ」
各々驚きやら何やらを好き勝手口にしている。
いや至さんキモいて。俺にも傷つく心ちゃんとあるんですけど?
「どうせ載せたんならいい顔しておかないと」
案外吹っ切れるタイプだからさ俺。
前の劇団にいた時は主役が多かったのもあってこういうのよくやってたし、何より嫌でも劇団の皆がやれってうるさかったし。
「ええな!の数も上がってるよん!」
「そのうちAさんのファンもつきそうですね」
「ファン……有難いけど俺役者じゃないしな……」
そういえば劇団の皆や俺の事を応援してくれてた皆、今頃どうしてるんだろう。少しは悲しんでくれてんのかな。
こんな奴でも応援してくれる優しい人ばかりで、中にはプレゼントとか手紙までくれてさ。
あれちゃんと全部読んでたよ俺。一人でニヤついてキモいって散々周りから言われだけど。
(って、いけないいけない)
いつの間にかつい感傷に浸っていた事に気付き、無理やり思考を切り替える。
「結局幸と一成の入団の件は……」
「あ、そうそう!」
俺が尋ねると、監督さんは本来の目的を思い出したらしい。慌てて二人に入団についての説明を始める。
良かった。話が変わった。
こればかりは考えても仕方ないし、何より考える度に俺を落としたあいつの顔がチラついて心が痛むからやめよう。
「俺は話を聞いてから決めるつもり」
「俺はオッケーっすよ。面白そうだし」
聞こえてくるやり取りを耳に入れつつ、けどどこか割り切れないままでいると、いつの間にか咲也が心配そうに俺を見てて。
「Aさん、大丈夫ですか?」
「あ……うん。平気」
ぎこちなく笑ってその場をやり過ごした。
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祐(プロフ) - 梨さん» 同じ推しの方に出会えてポンコツ厨の私大歓喜です\( 'ω')/バッ いいですよね.........え、おま、監督に惚れ、ちょ、チョロ〜!!ってなった瞬間彼が推しになりました(昇天) (2018年8月12日 23時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - おんぷさん» コメントありがとうございます!グダグダで薄っぺらくならないよう気をつけてるのでそう言って頂けると励みになります!応援感謝です\( 'ω')/バッ (2018年8月12日 22時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - アイトさん» コメントありがとうございます!この作品に時間を割いて下さった上に面白いと言って貰えてとても嬉しいです!頑張らせていただきます\( 'ω')/バッ (2018年8月12日 2時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
梨(プロフ) - まさかの最推しが同じでとても嬉しいです……ポンコツ尊い(クソコメ失礼します) (2018年8月10日 1時) (レス) id: f85cb309ef (このIDを非表示/違反報告)
おんぷ(プロフ) - 毎回、更新のたびに楽しく読ませていただいております!ペースがゆっくりな分、内容が濃いし面白いので、このまま続けて欲しいなと私は思います!これからも頑張って下さい。応援しております! (2018年8月10日 0時) (レス) id: 7e9d265bdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:祐 | 作成日時:2018年7月19日 1時