新しい土地にて(速水) ページ44
長い新幹線の旅を終え、改札を抜けてから初めての土地に足を踏み入れる。
「よし、到着!」
そう声に出せば、ようやく来た事への実感が湧きだした。
(待ち合わせ場所は……)
辺りを見回して、何とか地図を頼りに指定の場所へと向かう。
見た事の無い、言うなればゲームにすら出てこない未知の世界。
現実だとインドア主義の俺にはかなり辛いが、この世界がゲームだと思えば不思議と苦にならない。
(まだ時間まで少しあるな)
目的地に着いた俺は、腕の時計を確認して近くのベンチに腰掛けた。
ギリギリ夏手前の、そこまで暑くない太陽。
それを見ながら、今日の朝の出来事を思い返す。
早朝だったのに全員起きて見送ってくれたんだよなぁ……。
勝手に出ていくって決めたのに皆優しすぎて。
あの幸の「気をつけて」は特に破壊力凄まじかったな。
そう一人考える事十数分。
「速水さんですか?俺案内で来たんすけど、」
時間はあっという間に経っていたようで、気づけば例の案内役の人との待ち合わせ時間になっていた。
****
これからお世話になる衣装さんは、俺が男と知って気を利かせてくれたようで。
「ども、案内の成瀬っす!」
案内人として現れたのは、いかにもな感じのチャラい男性だった。
「速水です。わざわざすみません、来て貰っちゃって」
「いいっすよ別に!あ、道こっちっすから!」
指をさし、前を歩く成瀬さん。
優しい人みたいで良かった……。
それから話をする内に、お互い同い年である事が判明して、俺たちはそのままタメ口で話す事に。
「え、お前その人の弟子なの?」
「おう!今年からな!」
マジかよ。
一成といい成瀬といい、この世界ってチャラい奴ほど繊細な事するんだな。
「そんでさぁ、すっげー柄わりぃの」
先程とは違い、すっかり砕けた口調で話しかけてくれる成瀬。
気さくなおかげで俺も話しやすいし、何より同い年ってだけで気が楽だ。
「あれは女じゃねぇ。暴力ゴリラだ」
この通り、弟子として慕ってる様子は一切見受けられないけど。
てか暴力ゴリラて。
「俺生きて帰れるかな……」
「骨は埋めてやるぜ!」
何そのいい笑顔。
縁起でもないからやめてくれ。
その後も特に会話が途絶える事もなく、お互いについて話しながら仕事場へと向かう。
とりあえず成瀬って良い奴っぽいし、こいつが弟子入りを決めた人なんだから多分大丈夫だろう。
「これ最近メジャーで叩かれた跡な!」
「……………」
大丈夫……なんだろうな?
1461人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
祐(プロフ) - 梨さん» 同じ推しの方に出会えてポンコツ厨の私大歓喜です\( 'ω')/バッ いいですよね.........え、おま、監督に惚れ、ちょ、チョロ〜!!ってなった瞬間彼が推しになりました(昇天) (2018年8月12日 23時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - おんぷさん» コメントありがとうございます!グダグダで薄っぺらくならないよう気をつけてるのでそう言って頂けると励みになります!応援感謝です\( 'ω')/バッ (2018年8月12日 22時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - アイトさん» コメントありがとうございます!この作品に時間を割いて下さった上に面白いと言って貰えてとても嬉しいです!頑張らせていただきます\( 'ω')/バッ (2018年8月12日 2時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
梨(プロフ) - まさかの最推しが同じでとても嬉しいです……ポンコツ尊い(クソコメ失礼します) (2018年8月10日 1時) (レス) id: f85cb309ef (このIDを非表示/違反報告)
おんぷ(プロフ) - 毎回、更新のたびに楽しく読ませていただいております!ペースがゆっくりな分、内容が濃いし面白いので、このまま続けて欲しいなと私は思います!これからも頑張って下さい。応援しております! (2018年8月10日 0時) (レス) id: 7e9d265bdf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:祐 | 作成日時:2018年7月19日 1時