【A3!】舞台から落ちたら演劇の世界にいました３【男主】

春組、帰り道 ページ42

至side

裏方の皆さんに挨拶を済ませ、監督と別れた帰り道。

ようやく全員肩の力が抜け、寮に向かうその足取りは重い。

そして最年長の俺が多分今一番しんどい。

｢なんか俺、今になってやっと終わったって感じしてきました……｣

｢俺も……腹減ったし眠い｣

｢ごちそう楽しみネ〜！｣

相変わらずシトロン元気すぎ。
年一個しか変わらないのにこのテンションの高さはもはや異常。推し引き当てた時の俺かよ。

｢はぁ……監督がいない……｣

真澄は単なるこじらせすぎ。

……なんて思える位には、俺もこいつらを分ってきてる訳で。

もう続けるって皆に言っちゃったし、これからはもっとこいつらを知っていく事になるんだよな。

とかそんな事さておき。
今はただただ、

｢動きたくない働きたくない｣

この一言に尽きる。

｢至さんまたそんな事を……｣

｢一日五回は言ってますよね｣

｢口癖だから｣

てか何より来週からの会社がだるい。
週休八日で有給制の社会はよ。

なんて現実から一人懸命に離脱しようと考えてる内に話は切り替わったらしく、気づけば今日のロミジュリの話で皆盛り上がっている。

｢そういや、咲也のアドリブ凄かったな！｣

……ぶっちゃけその話出されると肩身が狭いというかなんというか。

まぁけど実際、咲也が機転を利かしてアドリブしてくれなかったら俺終わってたし。

｢ワタシも興奮したネ！｣

｢あれは良かった｣

｢あはは……ありがとうございます｣

滅多に褒めない真澄にまで褒められたのが嬉しかったのか、顔を赤くして照れる咲也。

俺もあの後お礼言ったけど、ここはもう一度言っておくべきだろう。

｢咲也、改めてありがとう。あそこで咲也が助けてくれなかったら、多分俺後悔したまま舞台辞めてたと思う｣

｢いえそんな！俺こそ我儘言って至さんの事無理にここまで付き合わせちゃって……｣

｢それを言うなら俺達も同罪だけどな｣

｢ワタシも至の事止めタヨ〜！｣

｢監督が悲しむから止めただけ｣

焦る咲也に続き、全員が俺もと言わんばかりに名乗りあげる。

謝らなきゃいけないのは俺の方なんだけど。

｢それは俺の意思でやっただけだから。てか今後もここでやってくって決めたのも俺だし。……それより、俺こそごめん。足の事黙ってて｣

皆の顔が見れなくて目線を外す。

生まれた数秒の沈黙を破ったのは、我らが座長。

｢内緒にしとけって言われてたんですけど、｣

その内容は、俺を驚かせるのに充分なものだった。

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