【A3!】舞台から落ちたら演劇の世界にいました２【男主】

物理的呼び出し ページ4

嵐がやってきたのは、案外すぐの事だった。

｢おいおい、ここは幼稚園のお遊戯会場か？｣

名乗らずに入り込んできた見覚えのあるおっさんに、俺は｢この時が来たか｣と密かにため息を吐く。

それから監督さんと言葉を交わし、自分の名前を堂々と告げるおっさん。やめろおっさんのドヤ顔なんて誰得にもならないだろが！

｢俺が初代春組の鹿島雄三だ｣

｢どう見てもヤクザ｣

よく言ったぞ真澄。
もうそのまま帰ってくれないかな。

そりゃあ当然話した事もない人を嫌いになるような俺ではないし、雄三さんの事も嫌いじゃないけど。

雄三さんて、どこか前の劇団で俺の事をよく叱っていた人に似ているんだよな。特にずばずば言って来る所なんてあの人そのものだし。

(まぁ相手を思って言ってくれてるのは分かるんだけどさ……)

にしてもやっぱり俺は苦手だった。
するとそんな考えを見透かされたのか、ふと雄三さんと目が合う。

｢お前は……｣

｢はい？｣

まさかいきなり目をつけられるとは。勘弁してくれよ。なんだ？何を言われるんだ？

あからさまにたじろいでいると、何も言わずに睨み続けてくる雄三さん。

｢あ、目付けられた｣

｢A、ざまミロネ！｣

おい聞こえてんぞ綴にシトロンさん！
特にシトロンさんに至っては何それ本心？たまにナチュラルに俺を傷つけてくるスタイルなんなの？

至さんトイレに離脱しててマジで良かった。

｢……まぁいい。とにかく、一度見せてみろ｣

それから雄三さんに流されるまま、ロミジュリの演劇が始まった。

＊＊＊＊

(そしてボロクソに言われました、と)

率直な感想を述べる雄三さんと落ち込む皆を見て、俺も表情が自然と難しいものになる。

確かに喝を入れるべきだとは言ったけど、こいつら全員初めてまだ一週間だぞ？先の事を知ってる分まだ見ていられるが、それでもかなり心苦しい。

(これは何作っても喉通らないだろうな……)

壁に背を預けて監督さんの隣に座っていた俺は、今日の夕食の量を減らそうと心に決める。

そんな時だった。

｢おい｣

｢はい？｣

鋭い視線と降りかかる声に、ふと顔を上げる。そこには雄三さんが、今にも殴りたそうな顔で俺を睨んでいた。

｢お前！！｣

｢ぐっ！｣

突如胸ぐらを掴まれ、引き上げられる俺……って何！？何事！？

｢ゆ、雄三さん！ちょっと来てください！Aくんも！｣

助けてくれた監督さんに連れられ、レッスン室から遠ざかる俺達。

(だ、誰か)

お願いします助けて下さい！

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