【A3!】舞台から落ちたら演劇の世界にいました２【男主】

任務遂行 ページ20

そして次の日の朝。

｢じゃあ、そろそろ行きましょうか｣

｢おけ｣

今日は少し早めに出る事を至さんに伝え、二人共靴を履き終わった時。

｢待ってよ、お父さん！｣

昨日の作戦が開始された。

｢お母さんと離婚するなんてウソだろ？｣

息子役である真澄の迫真の演技に対し、眉を顰める至さん。まぁ普通そうなるわな。

そしてそれに続き、次男三男である綴と咲也が便乗する。

｢待ってて。オレ、お母さんを呼んでくるから！｣

叫びながら、奥にある扉まで走り出す咲也。いや至さんお願いですからそんなに俺を見ないで下さい。俺だって被害者なんですから。

｢え、まさか監督が母親役……｣

だったら良かったけどな。

｢ケーバで三連単当てるヨ……｣

現実はそうですシトロンママです。

そのまま本編通りに話が進み、次は家族全員で父親役の至さんに想いを告げるシーン。

そしてもうすぐ現れますのは本編にない筈の新キャラ。はい、俺です。

やる時はやる男！俺です！

｢俺！これからも父さんと一緒に暮らしたい！だからーーー！｣

｢待ちなさい！｣

｢！！あなたは！｣

突如声を上げて至さんの前に立つ俺に、目を見開く咲也。……ねぇこれ絶対俺いらないよね？今ので本当なら終わってたよね！？

背後から聞こえる｢お前もか……｣なんて引き気味の言葉は今の俺には聞こえないぞ決して！

｢彼は既に私との契約が結ばれている……これがその証拠だ！｣

顔の前に持ってきた俺の手からチラリと覗く、三枚のプラスチックでできたカード。ちょっと憧れてたんだよね、この厨二感満載の持ち方。

｢そ、それは……！｣

｢この世界のあらゆる物を買い占める事ができると言われる魔法のカードだヨ……！｣

ここに来て初めてシトロンさんの流暢な日本語が生きる事になるとは。
そもそもこれ、俺はどういう立ち位置なんだろうか。登場するまでマジで空気じゃなかった？いや登場しても俺が誰なのか分からないけど。

｢ああそうだ！だからさっさと諦めて大人しく｢ぷっ｣……へ？｣

台詞の途中、後ろから聞こえた吹き出し音。
何事かと振り返れば、腹を抱えて笑う至さんが。

｢あははは！｣

｢至さん……？｣

戸惑った咲也が名前を呼ぶと、至さんは目に浮かんだ涙を拭いながら口を開く。

｢お前ら、バカすぎ｣

うわ、出ました至さんの第一名言！隣で聞けたとか今にも興奮で倒れそうだわ。

｢オレたちのこと、信じてください！お願いします！｣

何はともあれ、これで無事に解決だな。

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