やる気のおにぎり ページ32
綴side
(ここはこうするとして……)
Aさんの作った夕飯を食べ終わった俺は、その後もひたすら机に向かっていた。
俺のわがままを通し、運良く貰えたこの一週間。俺自身、稽古を休んでまで書けと言ってくれた監督さんの期待にはなんとしても応えたい。
……とは思うものの。
「はぁ……」
話に詰まり、背もたれに体重を乗せる。
原作ですら軽く知っている程度だというのに、それを捻って友情ものにするなんて。
我ながら無謀な発想だったのかもしれない。
「まだ初日なのにこんなに詰まってて大丈夫か俺……」
この時間になっても真澄はまだ帰ってこないし、残って自主練でもしてるんだろう。
そんな一生懸命なあいつらに俺なんかの脚本がつり合うのか、今から不安で仕方ない。
(う……考えてたら腹まで減ってきた)
真っ先に浮かんだのは今日のハムエッグとカレーうどん。どっちもめちゃくちゃ美味かった。
最初から三日間連続カレーだったせいで疑心暗鬼になってたけど、Aさんの料理はシンプルかつどれも美味くて。
今から明日の朝食が楽しみで仕方ない。
少しの間考えてると、誰かが扉をノックしてきた。
開いた先には、片手に皿を持ったAさんが。
「頑張ってるとこごめん。夜食におにぎり握ったんだけど綴食うかなーと思って」
「!!いただくっす!」
Aさん、ナイスタイミング。
ちゃんと両手を合わせてから、Aさんに作ってもらったおにぎりを口に運ぶ。丁度いい塩加減と優しい温かさ。
「……美味い」
「そ?よかった」
思わず呟くと、すっかり砕けた口調のAさんが笑った。それを見て俺も自然と表情が緩む。
(なんか、いいなこういうの)
上に二人の兄がいると言っても、殆ど俺が長男みたいなもんだったから。
こういう年上ならではの優しさに触れたのは随分と久しぶりかもしれない。
「俺、綴なら絶対に面白い脚本が書けるって思うよ。未来のファン一号だからさ、なんかあったらいつでも呼んで」
こうして背中を押してくれて、欲しい言葉をくれて。上二人に不満がある訳じゃないけど、こんな兄ちゃん欲しかったな。
「……Aさんて、なんか不思議っすね」
昨日服を貸した時はまるで弟みたいだなって思ったのに、今じゃ兄貴みたいな暖かさを感じたり。
本人は「どこがだよ」なんて言ってるけど。
「俺の脚本が完成するまで、こうして夜食作ってもらってもいいっすか?」
「もちろん。任せとけ」
おかげで脚本もはかどりそうだ。
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祐(プロフ) - 時雨さん» お返事が大変遅くなり申し訳ございません。もしよろしければどの話か教えて頂いてもよろしいでしょうか?分かり次第すぐに編集しようと思います┏○ペコ (2018年10月3日 14時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 役不足っていうのは自分には役目が軽過ぎで満足できないなんて言うときに使う言葉ですよ (2018年9月10日 14時) (レス) id: cf954cb7db (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 漣凪さん» ありがとうございます!今は面白いの一言が続ける気力になっております。むしろ妄想して貰えるなんて嬉しさで爆ぜそうです。頑張ります! (2018年3月3日 12時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
漣凪(プロフ) - とても面白かったです!ついつい自身でこの先の展開を妄想してしまいます(←変人)。更新頑張ってください (2018年3月3日 1時) (レス) id: 87e449a00b (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 茜さん» ありがとうございます!文字数制限に毎度ひいひい言っておりますが頑張ります (2018年2月25日 21時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:祐 | 作成日時:2018年2月23日 1時