裏切り者 ページ21
至side
今はここにいたくない。
Aの話を聞いた後強く思い、俺は監督さんに部屋の場所を尋ねた。
「あ、すみません。すぐに案内します!」
「……いや、場所だけ言ってくれれば大丈夫だよ。監督さんは色々こいつの準備してやって」
口ではそう言うけど、今は誰とも話したくないのが本音。
特にさっきから謝りっぱなしのこの男。
こいつとだけは話す気にならない。
監督さんから場所を言われ、俺はその通りに用意された自分の部屋へと向かう。
広さは充分。快適さも充分。ここならゲームも思う存分出来る。全てにおいて申し分ない俺の城。
なのに素直に喜ぶことが出来ない。
「……はっ」
閉めた扉に背を預け、乾いた笑いを零しながらズルズルとその場に座る。
『誰よりも舞台が好きな自信があります』
思い出すのはその言葉。
……んだよ。舞台好きなら早く言えよ。
裏切り者。
そんな感情が次々に溢れてくる。
本当は、あいつが悪くないこと位分かってるのに、捻くれた俺には、そんな醜い言葉しか生まれてこない。
会った時、ゲーム好きなのを知ってゲーセンに入った時。こいつとは不思議と気が合うと思った。普段猫被って生きてる俺が、気の緩みで口調を崩してしまう位話しやすくて趣味も同じで。
他の奴と比べて俺の領域に入り込んでこない楽さとか、ちゃんと自分の立場(奢られてる側)というのを分かってる所とか。
一言で言うなら、「俺にとって今後唯一かもしれない一緒にいて楽なやつ」
それこそゲーマーの勘だが、そんな相手になってくれるかもと。
寮問題でこいつを巻き込んだのも、どうせこいつも俺と一緒で舞台になんか興味が無いと思ったからだし。
途中で例の稽古とやらに飽きても、こいつは俺側に立ってくれる。そう思い込んでた。
けど違った。俺のそんな期待とは違って、あいつは舞台が大好きな、この場においての勝ち組と来た。
あいつが咲也達に囲まれてるのを見て、急にAと俺の間に壁が生まれ、遠い人間になった気がした。
舞台に興味がある奴とない奴。やる気がある奴とない奴の差から生まれる、乗り越えられることのない小さくて大きな壁。
「……あーあ」
ため息を吐き、目を細める。もうどうでもいいわ。この素晴らしい城を手放すのはほんとに惜しいけど、こんな窮屈な思いをする位ならいっそ他の場所にーーー。
そこまで考えた時。
「至さん。Aです」
二回のノックと共に、今俺が最も会いたくないやつの声が扉から聞こえた。
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祐(プロフ) - 時雨さん» お返事が大変遅くなり申し訳ございません。もしよろしければどの話か教えて頂いてもよろしいでしょうか?分かり次第すぐに編集しようと思います┏○ペコ (2018年10月3日 14時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 役不足っていうのは自分には役目が軽過ぎで満足できないなんて言うときに使う言葉ですよ (2018年9月10日 14時) (レス) id: cf954cb7db (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 漣凪さん» ありがとうございます!今は面白いの一言が続ける気力になっております。むしろ妄想して貰えるなんて嬉しさで爆ぜそうです。頑張ります! (2018年3月3日 12時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
漣凪(プロフ) - とても面白かったです!ついつい自身でこの先の展開を妄想してしまいます(←変人)。更新頑張ってください (2018年3月3日 1時) (レス) id: 87e449a00b (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 茜さん» ありがとうございます!文字数制限に毎度ひいひい言っておりますが頑張ります (2018年2月25日 21時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:祐 | 作成日時:2018年2月23日 1時