テンダーサイン７’ 【N.K】 (ページ11)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:35,133 hit

２２１．封印。ページ11

私の今の家に智くんがいることには少し、変な感覚で。

そもそも智くんが私の目の前にもう1度いることにも驚いている。

「Aらしい家だね。」
「両親の勧めだよ。」
「そんな感じする。」

2年も付き合っていたんだから、お互いの家は行き来していた。

だから智くんも私の両親を知っている。

なんだか懐かしかった。

けど、この家にいれる初めての男性が智くんだなんてやっぱり複雑だった。

智くんはまた私の初めてになった。

「とりあえず、お風呂沸かすから沸いたら先に入っておいでよ。」
「わかった。」

リビングに来客用の布団を持っていき、荷物を私は片づける。

リビングに出しっぱなしの化粧品、片づけられていない雑誌。

それを片づけて、カバンの中も整理する。

「…」

カバンの中でひときわ目立っている和也くんからのプレゼント。

私が好きそうだからと言ってくれた、ぬいぐるみ。

私の好きなお店の、ハンドクリーム。

少し憧れていたブランドの、時計。

幸せから不幸に突然なる事に何とも言えない絶望感を感じた。

「いつかこれが…和也くんといるときに使えますように…」

和也くんに「使ってくれているんだね、ありがとう。」と言われたい。

それまでは開けることも飾ることも全部できなかった。

和也くんに会いたい。