検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:55,963 hit

第十九話 ページ20

Aの目を覆っていた夏油(げとう)の手がそっと離れた時には三上の死体は消え、血痕だけが残っていた。
 目の前で人が死んだのはこれで二度目だったが今回、その瞬間を見てはいない。それでも夏油が殺したということはわかった。
 だが確かなのは、彼がやらなければ間違いなく自分がやっていたということ。


「A」

 声をかけられ、ぼんやりとしていたAは我に返ると同時に呪術を使うところを見られたという事実を思い出す。

「怪我は、ないかい?」

「は……え? あ、はい」

「よかった」

 夏油はホッとしたように笑う。それは今までのような社交辞令とは違い、本心から言っているようだった。

「あの、皆さんこそお怪我は……」

「私たちは大丈夫だよ。君のおかげだ」

 それを聞いたAは少しの間言葉が出なかった。『君のおかげ』。

「夏油様! 一体何が……」

 駆けつけた菅田(すだ)に「みんな無事さ」と夏油は安心させるように微笑むとAの肩に手を置いた。
 
「この子が助けてくれたからね」

 どうして黙っていたんだい? と彼は今までと打って変わって嬉しそうに言った。

「あんなに素晴らしい力を持っているなんて!」

 ――え?

「もっと自分を誇るべきだ。君は立派な呪術師だよ」

 その言葉は十三年間ずっと『自分を誇る』ことができなかったAにとって、ようやく差し伸べられた救いだった。

 やがて彼は呪霊の存在しない世界を作るのが目的だと語る。そのために同じ志を持つ呪術師を集めているのだと。

「力を貸してほしい。私たちには君が必要だ(・・・・・)

 それを聞いた瞬間、自分の居場所はここしかないと思った。なんて光栄な。断る理由なんてない。

「はい……! 勿論です!」
 










「A、なんか良いことあった?」

 その日の夕方、やけに上機嫌なAに春太は不思議そうに尋ねた。

「はい! 今日は吉日です」

「そりゃよかった。……あ、死んだ」

「え? あーーー!」

 Aがゲーム画面に視線を戻した時には既に敵に襲われた後だった。

「ゲーセン久々だから腕が鈍ったんじゃない?」

「かも。あ、そういや初めて会ったのってここの近くでしたね」

「そうそう、小学生が一人でいるなーって思って」
 
「仲良くしてくれるとは思ってなかったです」

「あー、なんかねぇ……君の名前が気に入ったってのが理由のひとつかな」

「名前?」

第二十話→←第十八話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (84 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
125人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 夏油傑
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

闍弥嵩 李(プロフ) - 猫かぶりさん» ありがとうございます! いやほんと、ななみん背高いし紳士だし実は優しいし最高ですよね! 芥見先生が『選ぶなら七海にしておけ』と勧める気持ちが分かります! (2021年6月1日 16時) (レス) id: 425bc70507 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - 推しLOVEさん» ありがとうございます! 頑張りますね! (2021年6月1日 16時) (レス) id: 425bc70507 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 続きがとても楽しみです!そしてななみん背高いぃぃぃ!!! (2021年5月30日 23時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
推しLOVE - すっごく面白いです!頑張ってくださいね! (2021年5月23日 19時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - 花笠さん» ありがとうございます! (2021年4月17日 15時) (レス) id: 1dd78312f0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:闍弥嵩 李 | 作成日時:2021年2月15日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。