11.日差し ページ11
意識が髪の毛だけに集中する。
｢っ、…｣
スカートをギュッと握り締める。クシャッとシワができてしまった。
センパイの顔をちらっと盗みみれば、優しい顔をしていて、また胸が苦しくなる。
｢ごめ、勝手に触っちゃって。まじごめん！｣
パッと離れた大きな手。やべー、と言いながらおでこを撫でる。
ドキドキが止まらない。好きすぎて苦しいっていう表現、漫画でもよく見るけど嘘だと思ってた。
｢全然…大丈夫…です、｣
むしろ嬉しかったですなんて言えるはずもなく。確かめるようにもう一度髪の毛を撫でてみる。
何も感じない。自分で撫でても、時みきも何も感じない。
きっと、センパイの魔法なんだ。センパイにしかかけられない魔法なんだ。
…なんて、アホみたいなことも考えたりして。
｢Aちゃんといると、落ち着く｣
｢…え？｣
｢素でいられるんだよね。何も気にしなくてもAちゃん優しいから笑ってくれるし｣
手のひらをグーパーと動かしながら、一点を見つめてそう言うセンパイ。少しだけ、悲しそうな顔。
｢優しいからじゃなくて、楽しいから、ですよ｣
｢…？｣
｢センパイといる時間が、楽しいから。毎週水曜日、少しだけだけど会える時間が私の楽しみなんです｣
｢…、｣
｢私が優しいからセンパイに合わせてるんじゃなくて、私も素で楽しいからセンパイといるんです｣
言ってから気づく。あぁ、バカなこと言ってるなぁ私。
キョトン顔で私の方を見るセンパイと、バチりと目が合う。一気に鼓動が早くなる。
｢ねぇ、俺たち気が合うね｣
｢え？｣
｢俺も全く同じ｣
いつものニッコリスマイルを見せてくれたセンパイが、私の頭を撫でる。すっぽり収まってしまうくらい、センパイの手のひらは大きい。
｢俺もAちゃんと会えるの楽しみなの。実は教室からここまで走ってくるぐらい｣
イタズラっ子みたいな顔をして笑う。オレンジ色の日差しがセンパイの肩を照らす。
頭から下に降りてきた手のひらは、私の手のひらまで来るとギュッと掴む。
｢授業中に外から女子の声聞こえるとAちゃんいねーかなーって外見ちゃうし、寝る前だって何してるかなって考えてる｣
｢Aちゃん、ずっと言おうと思ってたんだけど｣
｢…？｣
｢俺と連絡先、交換してくれませんか｣
*
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作者名：みう
| 作成日時：2021年9月9日 11時
